俳優の白石加代子さんが上田秋成の怪異小説を朗読するイベント「村上春樹 presents 白石加代子怪談ライブ『雨月物語』」が先月28日、東京都新宿区の早稲田大学演劇博物館で開かれた。野天の前舞台には事前の抽選で選ばれた約100人の観客が集まった。
企画した村上さんは冒頭のあいさつで京都・西福寺の秋成の墓を訪れた際の体験についてふれ、「秋成は屈折した人だったが、雰囲気のいい墓で、僕もこういう小さい墓で眠りたいもんだな」と語った。「雨月物語」は小学生のときに口語訳で読んで以来の愛読書。「読んだ後に怖い夢にうなされることもあったのに、つい読んじゃう不思議な中毒性がある。特に白石さんの読む雨月は冗談抜きで怖い」と、白石さんを呼び入れた。
今回の朗読は「吉備津(きびつ)の釜(かま)」。浮気された妻が夫を祟(たた)り殺す怪異話を、白石さんは原文で身ぶり手ぶりを交えながら感情の抑揚も鮮やかに読み終えた。
朗読後の白石さんとのトークで村上さんは「本で読んでも怖いのが、朗読だと緊張感がすごい」と感想を述べた。白石さんは「私はお客さんとしてこれを聞く気にはなれません。他の方のは見たくない。ただ、自分でやるのは楽しい。怖いのにもいろいろあるけれど、雨月は理由なくいろんな怖いことが現れるのが怖い」と語った。(野波健祐)=朝日新聞2022年10月5日掲載