空想の扉を開けて、絵本の世界へ
入り口にあるのは、『Michi』(福音館書店)のページを開いた空間。会場にはどんな道が広がっているのか、junaida作品の中に入っていくワクワク感でいっぱいになります。
エントランスに入ると、天井から円形の赤い幕が下がっています。幕の内側には、junaida展のメインビジュアルの下絵が。
観客が幕の中に入ると、真上からスポットライトがあたります。これには「これからはじまる物語の主役はあなたです」という意味が込められているのだそう。色のない下絵にどんな色がついていくのか、自分自身の空想の扉も開けながら会場を進みましょう。
本展は4つの部屋から構成されています。最初の部屋は、第1章「交錯の回廊」。初期作品『TRAINとRAINとRAINBOW』(Hedgehog Books、2011)、三越のクリスマスディスプレイのために描かれた『HOME』(サンリード、2013)などが、展示されています。
原画は、主に紙に鉛筆、透明水彩、ガッシュで描かれています。とても細かく描かれているので、一つひとつじっくり眺める時間が楽しく、junaidaさんの世界観にぐんぐん引き込まれていきます。
怪物たちと一緒に行進を
回廊を進んでいくと、薄暗い廊下が現れ、前方になにやら動く影……。なんと、『怪物園』(福音館書店)の怪物たちが行進しているではないですか!
歩いていくと、怪物たちの影に来場者の影も重なっていく演出が施され、まるで自分も怪物になって歩いているような感覚に。原画をただ動かすのではなく、怪物たちがそれぞれ違う動きをしているのがすごい! 急に立ち止まるもの、目をギョロリとこちらへ向けるものなど、観察するのも楽しいです。絵本に登場する子どもたちや、透明の怪物も歩いているので、ぜひ探してみてください。
描き下ろしの三連画は存在感たっぷり
怪物たちに導かれながら、次なる部屋、第2章「浮遊の宮殿」へ。一変して、明るく広々とした空間が広がっています。
中央に飾られているのは、本展のために描き下ろした3作品。原画と、大きく引き伸ばされたものが対になって展示されています。
junaidaさんの絵本作りは、本と原画が同じサイズで描かれているのが特徴だといいます。まず完成した本の大きさのイメージがあり、そのサイズで絵を描いていく。今回のようにチラシやポスターなど、いろいろなサイズで展開させていくことはあまりないのだとか。同じ作品でもサイズの違いで絵の雰囲気が変わってくるような気がします。
こちらの作品のもう一つのポイントは、絵の一番下にある描きかけのような部分。通常はカットしてしまうところですが、junaidaさん自身が「カットしてしまうのは憚られるような美しさ」を感じ、あえて残すことに。普段は表に出ない部分を見ることで、観客が作品に一歩近づける、そんな思いも込められているそうです。
原画を浴びて、作品世界に潜り込む
広間の壁面に展示されているのは『Michi』『の』『怪物園』『街どろぼう』(すべて福音館書店)の原画、100点余り。絵本を読むように眺めてみたり、一枚一枚をじっくり見たり、作品の世界を堪能できる空間です。
続いて、第3章「残像の画廊」へ。ライフワークのように書き続けている宮沢賢治へのオマージュ「IHATOVO」シリーズや、本の装画や挿絵などが紹介され、junaidaさんの多彩な活動の様子を知ることができます。
最後に辿り着くのは、真紅の空間に約120点の作品が展示された第4章「潜在の間」。本展のコンセプトの一つ「絵を浴びるように観る」ことを体感できるような部屋になっています。
グッズやカフェなども含めた一つの作品としての展覧会に
まだまだ見どころいっぱいのjunaida展ですが、ちょっと一休みして、お楽しみのミュージアムショップへ行ってみましょう。
junaidaさんも企画から携わったというオリジナルグッズは、あれもこれも欲しくなるものばかり。
ミュージアムショップの隣にあるPLAY! CAFEも、junaida展に合わせたメニューがずらり。どれも食べてしまうのがもったいなくなるぐらいかわいい。
本展のタイトル「IMAGINARIUM」は、イマジネーション「IMAGINE」とプラネタリウムやアクアリウムなどの語尾「-ARIUM」をミックスしたもの。そこには、どんな思いが込められているのでしょうか。「展示だけでなく、空間全体、アニメーション、図録、ミュージアムグッズ、カフェ、すべてのものが一つの大きな塊となって、一つの作品になるように考えて作りました。観客のみなさんが作品の中に入り、作品の一部になれるような展覧会になっています」とjunaidaさんは話します。
まだまだある! junaida展の楽しみ方
junaida展の楽しみ方は、まだまだいっぱいあります。『の』の「わたし」になれる、コートと帽子を身につけて作品の一部になってみたり、本のコーナーで絵本を読んだり。また、会場には小さなイラストが隠されており、どこかにはjunaidaさん直筆の絵もあります。
そして、絵本とはまた違ったjunaida作品の魅力が詰まった展覧会図録『IMAGINARIUM』。絵の一部が拡大されていたり、紙やインクを変えて印刷されていたりと、新しい視点で作品を楽しむことができます。
上階にあるPLAY! PARKでも、junaida展に関連した3つのワークショップを開催。毎週、一つずつ街を作りながら道をつなげていく「PLAY! PARK の『Michi』」。みんなの「の」を繋げて物語を作っていく「PLAY! PARKの『の』」は、会期終了時に分厚い本が完成する予定です。ほかにも、『怪物園』をテーマに段ボールで遊べるものもあり、junaidaの作品世界を体験できます。
総数416点という、膨大な絵を浴びるように見るjunaida展。全部しっかり見るには、7時間かかるといわれましたが、ほんとうにとても1日では見切れません。もっともっと見たいから何度も通いたくなる展覧会です。
会場を出るときには、エントランスで見た下書きの絵は、観客それぞれの物語の中で色づけられるはず。どんな色や想像が広がるのか、ぜひ体感しに出かけてみてください。