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雑誌「IWAKAN」 読むほどに根深さ、でも希望も

雑誌「IWAKAN」

 「IWAKAN」すなわち違和感。世の中の当たり前、とりわけジェンダーに関連する当たり前に対して、違和感を問いかける雑誌だ。

 かつて私は、ドラァグクイーンをやっているという男性に会ったとき、ドラァグクイーンが何のことかわからず、その場で教えてもらったものの、説明を聞いてもわからなかった。実は今もよくわかっていない。女装してパフォーマンスをする男性?

 クイアという言葉を聞いたときも、すぐに調べたが、わかるようでわからなかった。言葉の意味より、その概念が持つニュアンス、奥行きが想像できないのである。

 おそらく私が身体的にも性自認もともに男性で、異性愛者で、つまり世のマジョリティー側なので、これまで大きな違和感を感じることなく生きてこられたせいだと思う。

 だからこそ、本誌の巻頭言に《社会に蔓延(はびこ)った当たり前や普通の数々。それらに心地よさを感じる人もいる一方で、常に違和を感じながらも、自我を抑え心地よさを感じているフリをしなくてはいけない人もいる。そんな私たちの存在は、笑いや自虐のネタにされてきた》とあるのを読むと、たしかに昔笑いのネタにした覚えもある自分は、理解あるフリでごまかすことは許されない気がしている。

 そして今も、LGBTなどの当事者に対して、偏見を持つべきでないと思いながらも、無意識に刷り込まれた先入観にどっぷり浸(つ)かっているのではないかという怖(おそ)れを拭いさることができない。

 なので本誌を読むと、いろいろな言葉が突き刺さった。科学史の研究者は、日本ではフェミニズムの議論やジェンダー論の研究への理解が十分ではないとし、《「これが流行だから」「いいことだから」という気持ちで関心を持つ人が急に増えた》、そしてそれは《危険ですらある》と断じている。図星である。自分は何もわかっちゃいないのだ。

 本誌の内容は、ジェンダーやフェミニズムの研究者・当事者・文筆家らの寄稿や対談、それに関連したアート作品、WEBアンケートのほか、最新号では、ドラァグクイーンのインタビュー、LGBTへの差別的言説が載せられた神道政治連盟の冊子について神社本庁に所属する神社の禰宜(ねぎ)に話を聞く記事なども掲載されていて、練度が高い。

 インターセクショナリティ、トキシック・マスキュリニティ、クワロマンティックなど聞き慣れない言葉もばんばん出てくるし、読むほどに問題の根深さ複雑さに気が遠くなってくるが、最新号のモデルふたりの対談で、《ヒートアップすることはあるけれど、互いの話を掘り下げると「そういうことだったのか」と思える瞬間が絶対に来るはず》という言葉は希望であり、ジェンダーやセクシャリティーに限らず、あらゆる事象に通じる指摘だと感じた。=朝日新聞2022年11月5日掲載