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小沼理さん「1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい」インタビュー 自分知るためつづる日々

小沼理さん

 時に友人以上の親密さで、知らないはずの誰かの物の見方や暮らしの手触り、日々の思考が流れてくる。日記を読むのは、そこに一人の人間が生きていることを実感させる行為だ。それは文章を介した静かなアクティビズムにもなりえる。
 東京に暮らすゲイ男性による、2020年春からの2年半の記録。コロナ禍が収束しない中でのオリンピック強行や性的少数者の存在を否定する政治家の差別発言にとまどい憤りながら、署名やデモを通じて自分の声を届ける方法を模索する日々と同時に、仕事や読書をし、恋人と暮らす一人の若者の人生の断面が、てらいのない文章で刻まれている。

 日記をつけ始めたのは15歳の頃。人に調子を合わせすぎてしまう癖があり、机に向かうのは、「日々の出来事に自分がどう感じたのか。それを言語化して自分のことを改めて知る時間だった」。社会人になって一時中断していたが、20代半ばのある日、ふとまた筆をとった。
 同性に惹(ひ)かれると気づいていた幼少期。その頃から抱えていた「自分はエラー」という感覚。カミングアウトしていない職場の飲み会で、「結婚はまだ?」という同僚からの質問をはぐらかす時の葛藤。同性パートナーを殺害された男性への遺族給付金を認めない判決が、自分の将来にもたらす意味――。日記を人の目に触れるかたちにしたのは、「いまだ異性愛が中心の社会で(中略)自分をいないことにする力に抗(あらが)いたかった」から、と前書きに記した。

 アクティブに情報を摂取し、不均衡に胸を痛めている人こそ疲弊してしまう時代。自分をいたわりつつ、立ち止まって考えることの大切さを教えてくれる本でもある。「毎日がくり返しのように感じてしまうときも、微妙な差を見つめることで生きている実感が得られると思うんです」 (文・板垣麻衣子 写真・外山俊樹)=朝日新聞2022年11月12日掲載