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2022年ベストセラー、総合「80歳の壁」・文庫「三千円の使いかた」 老い・マネーの本が上位に

和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)、原田ひ香『三千円の使いかた』(中公文庫)

 今年の年間ベストセラーが取次大手の日本出版販売(日販)から発表された。文庫・コミックなどを除いた総合部門では『80歳の壁』(和田秀樹著、幻冬舎新書)、文庫部門では『三千円の使いかた』(原田ひ香著、中公文庫)がそれぞれ1位に。「老い」と「お金」への関心の高さを映し出すランキングとなった。

 総合ランキングでは、2位が『人は話し方が9割』(永松茂久著、すばる舎)、3位が『ジェイソン流お金の増やし方』(厚切りジェイソン著、ぴあ)。ベスト10に『70歳が老化の分かれ道』(和田秀樹著、詩想社新書)、『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著、朝日新聞出版)がランクインした。

 老いやお金を扱った本が目を引くなか、フィクションでは狙撃兵となったソ連の少女を描く『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬著、早川書房)が総合5位に食い込んだ。昨年11月に発売され、今年4月に本屋大賞を受賞。2月に始まったロシアのウクライナ侵攻も背景に注目を集めた。

 総合9位『本当の自由を手に入れる』の両@リベ大学長さんを始め、ユーチューバーの著書が目立つ年でもあった。5人組の「コムドット」は写真集部門で『TRACE』(講談社)が1位だったほか、リーダーやまとさんのエッセー『聖域』(KADOKAWA)が総合15位。雨穴(うけつ)さんの『変な家』(飛鳥新社)も単行本フィクション部門5位に入った。

 老いやお金をテーマにした本が好調だったことについて、出版業界に詳しいライターの永江朗さんは「経済的にもインフラ面でも日本が没落していくなか、大切なのは単に長生きするのではなくQOL(生活の質)を保ちつつ老いること」と分析。一方で「ベストセラーには皆と同じものを買いがちな高齢者の消費傾向が強く表れる。必ずしも日本人の読書の全体像を反映していないことには注意が必要」と指摘した。(田中ゑれ奈)=朝日新聞2022年12月14日掲載