1. HOME
  2. トピック
  3. 海外好き編集者が発掘した名作 新潮文庫「海外名作発掘シリーズ」

海外好き編集者が発掘した名作 新潮文庫「海外名作発掘シリーズ」

 大々的な宣伝はせず、証しは帯に描かれた小さなマークだけ。そんな「わかる人だけわかる」感もマニア心をくすぐる「海外名作発掘シリーズ」が、新潮文庫で継続中だ。エンタメの旧作を中心に国もジャンルも幅広く、オール初邦訳で紹介する。

 第1弾は今年5月刊行のライオネル・ホワイト『気狂いピエロ』。ゴダール映画の知る人ぞ知る原作だが、本国アメリカでも入手困難となっていた。第2弾のドナルド・E・ウェストレイク『ギャンブラーが多すぎる』は、このシリーズただ一人の編集者・竹内祐一さん(60)が古書店で偶然、原書に出会ったのがきっかけ。最新刊のポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』は、純文学作家ポール・オースターが別名義で発表した幻のハードボイルド長編だ。

 かつて早川書房で「ミステリマガジン」編集長を務めた竹内さんは、新潮社で15年間の広告部勤務を経て、昨年、再び編集の現場へ。近年同社では低調だった海外エンタメに取り組むべく、企画を立ち上げた。

 今月末には、1955年に英国推理作家協会最優秀長編賞を受けたウィンストン・グレアム『罪の壁』を刊行予定。「エンタメは時代を映す。ジミヘンと最新のロックを聴き比べるように、旧作の中に今に通じる原型を探すのも面白い」(田中ゑれ奈)=朝日新聞2022年12月17日掲載