『議員の両性同数 パリテの現在地』
日本では女性議員の割合が非常に低い。2018年には「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が制定されたが、理念法に止(とど)まる。仏も1990年代には議員の女性比率が国際的に低い国だった。だがその後、憲法改正や「パリテ法」制定を通じ、選挙公職への両性平等な参入を促進する義務規定を確立してきた。R・セナック『議員の両性同数 パリテの現在地』(白水社文庫クセジュ・1320円)は、パリテの原理、立法とその実施、効果などを論じる。訳は若干硬いが、属性による市民の区別を禁じる共和国理念とも格闘しつつ、意思決定権の平等を目指してきた同国の模索を簡潔に伝える。
★R・セナック著 白水社文庫クセジュ・1320円
『主権者を疑う 統治の主役は誰なのか?』
民主主義の今日的課題には「主権者国民」の絶対視もある。駒村圭吾『主権者を疑う 統治の主役は誰なのか?』(ちくま新書・1012円)は「国民」を主権者/有権者/市民という「三つの仮面」をもつ存在と捉える。その上で、主権と主権者の歴史を辿(たど)り、有権者の舞台・民主制と市民の場・市民社会を吟味する。こうして主権者の絶対性を相対化し、有権者や市民としての日常的な政治関与の重要性を論じる。先の選挙で女性議員が大幅増加した東京都杉並区の結果が、有権者代表の女性区長と市民の動きの反映であったように、日常の地道な活動が変革を導きうるのだ。
★駒村圭吾著 ちくま新書・1012円=朝日新聞2023年5月13日掲載