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岡田憲治さん「教室を生きのびる政治学」インタビュー 輝く原石の邪魔をしない

岡田憲治さん

 国会審議で議員が事実に反することを声高に言い立て、首相公邸では親族が私的宴会を開きと、日本政治の風景はますます荒涼としている。

 「理にかなうか否かでなく、開き直ってこれは私の信念だと言う方が政治的果実を得られるようになってしまった。言葉への敬意がない。安倍晋三政権以来の大きな宿題です」

 病的なものをどう治していくか。そう考えると、話は文明史的な難題に及んで行き詰まってしまう。だから著者は、問題を立て替える。

 本書が希望を託すのは、若者、それも中高生の子どもたちである。政治学の堅苦しい用語を解きほぐし、日常生活の問題に即して、他者と共に生きるために必要な考え方、言葉と身体の使い方を平易に伝える。

 「10代はきらきら輝く原石なんですよ。大人たちもかつてはそうだったのに、その可能性を毀損(きそん)されてしまった。必要なのは、原石に余計な手を加えず、子どもたちが自ら学べる多様な環境をつくることです」

 力を抜いて自分を守る――それを前提に掲げて始まる本書では、例えば校則の話から権力や合意、自治の何たるかを解き、自立に触れて「他者に適切に助けを求める」ことを奨励し、自己決定と自己責任論の違いを語っていく。自身、10代の2人の子を持ち、学校や地域の活動に関わって実感していることでもある。

 「公共空間が子どもたちにとって自分を脅かすものになってしまっている。一度失敗したら終わりだと震え、うずくまってしまう。そうじゃない、社会とは自分をそこに適応させるべきものではなく、自分たちで作り上げていくものなんだ、と」

 原石が損なわれる分岐点はもっと早いのではないか。そう思い、より年下に向けて語る準備を始めた。政治学の言葉に一層の「和文和訳」を施すのは容易でなく、いばらの道を覚悟している。(文・写真 福田宏樹)=朝日新聞2023年6月10日掲載