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東大「大江健三郎文庫」デジタル化資料を公開 自筆原稿など1.8万枚、著作権の検討重ね

自筆原稿の画像が表示された端末と、関連書籍が並ぶ大江健三郎文庫=東京都文京区

 大江文庫は、大江さんが残した約1万8千枚の自筆原稿や校正刷りをデジタル化。東大弥生キャンパスの一室にある文庫内のモニター端末を使って、高精細な画像を閲覧できる。

 あわせて、在野の大江研究者である森昭夫さんが作成した大江健三郎書誌稿をもとに、作品の初出と、収録された書籍が検索できる書誌情報データベースを構築。それらと原稿の画像とをひもづけた。画像の閲覧は文庫内に限られるが、書誌情報データベースには誰でもアクセスできる。

 設立準備に携わってきた文学部の安藤宏教授は「作家の草稿を扱う場合には著作権という大きなハードルがある。いちばん悩んだのは、どういうかたちで閲覧に供するかだった」と語った。「鴎外や漱石ら明治大正期の作家については自由に原稿を分析しているが、現役の作家に関して画一的な分析をすることは、ほとんどタブーに近かった」

 公開については著作権を継承する遺族からゆだねられたものの、複製に制限を設けながら研究や教育に活用できるようにするため利用規則の検討を重ねたという。「今後、著作権の生きている作家の自筆原稿をどう扱うかという一つのモデルケースにしていただけるのではないか」と話した。

 書誌情報データベースへのアクセスなど、詳しくは大江健三郎文庫の公式サイト(https://oe.l.u-tokyo.ac.jp)へ。(山崎聡)=朝日新聞2023年9月6日掲載