スウェーデン・アカデミーは5日、2023年のノーベル文学賞を、ノルウェー出身の劇作家、ヨン・フォッセさん(64)に授与すると発表した。授賞理由は「彼の革新的な戯曲と散文は、言葉に出せないものに声を与える」としている。
1959年、ノルウェー生まれ。83年に小説「赤、黒」で作家デビュー、児童文学や詩などを手掛ける一方、90年代から戯曲を書き始めた。96年初演の「だれか、来る」は、フランスで99年に上演された際に「21世紀のベケット」と称賛された。欧州の現代演劇を代表する劇作家として、戯曲は40以上の言語で翻訳上演されている。イプセン賞や北欧戯曲家賞を受賞し、「イプセンの再来」とも呼ばれる。
作風は、詩のように短いせりふを反復し、日常生活を舞台にしながら社会への不安や人間の在り方などを重層的に問う。近代劇のリアリズムを踏まえつつ、間やリズムで心理や風景を描写する戯曲が、国際的に高く評価されてきた。
日本での戯曲初演は2004年。太田省吾演出「だれか、来る」、三浦基演出「名前」など4作が上演され、本人も来日した。
2021年には7部構成の小説が完結し、22年の英・国際ブッカー賞と全米批評家協会賞小説部門で、いずれも最終候補となっていた。
今年の賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5千万円)。授賞式はノーベルの命日にあたる12月10日、ストックホルムで開かれる。
(ロンドン=藤原学思)朝日新聞デジタル2023年10月05日掲載