「書店員が選ぶノンフィクション大賞 オールタイムベスト」の授賞式が東京都内で開かれ、西加奈子さんの「くもをさがす」(河出書房新社)に大賞が贈られた。
同賞は、2018年に始まった「本屋大賞ノンフィクション本大賞」が今年、運営体制の変更によって中止となったことを受けて丸善ジュンク堂書店が企画した取り組み。今年5月までに刊行された国内外のノンフィクション作品を対象に、全国の書店員が投票で選んだ。
「くもをさがす」は、語学留学先のカナダで西さんに乳がんが見つかってから寛解するまでの日々をつづる。受賞のあいさつで西さんは、「元々出版する予定もなく、ただ日々を生きるために書き始めたものだった」と明かした。「それがいつのまにか、どこかにいる『あなた』に読んでほしいという思いに変わって、幸運なことに出版までこぎ着けることができました。こんなにたくさんの『あなた』に届けることができたなんて夢のようです」
高校時代、西さんは人生を変えた一冊であるトニ・モリスンの「青い眼(め)がほしい」に書店で出会った。「今回書店員さんに選んでいただいたのは本当に幸福なこと。私はたくさんの『あなた』にお届けする作者でもあるんですが、読者でもあります。誰かの作品を受け取る『あなた』の一人でもあるので、これからも書店に通い続けます」と、感謝の言葉を述べた。(田中瞳子)=朝日新聞2023年12月6日掲載