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「ホワイトバード」ほか子どもにオススメの3冊 正義に反すること、立ち向かう

「ホワイトバード」

 この本は話題作「ワンダー」のもう一つの物語である。「ワンダー」では、いじめっ子として登場したジュリアンが主人公だ。ジュリアンのおばあちゃん・サラは子どもの頃、フランスの田舎で両親と幸せに暮らしていた。ナチス占領下のフランスではユダヤ人への迫害が激しくなっていく。ある日、授業中にサラを含めたユダヤ人の子どもたちが、ナチスに連れ去られそうになり、事前に逃げることになったが、サラだけが校舎に隠れる。その時、サラを助けてくれたのがクラスメイトのトゥルトーと呼ばれる少年だった。

 ジュリアンはトゥルトーの行動を通して、正義に反することに立ち向かっていく勇気を持つ大切さを伝えたかった。今も世界では紛争の種が絶えず、各地で戦争があり、サラと同じように恐ろしさに震えている子どもたちが存在するからである。

 ジュリアンが、学校の宿題の作文のために、おばあちゃんに戦争体験を聞くという形をとっているので、ユダヤ人迫害という重いテーマでありながら、すんなりと物語の世界に入っていくことができる。(パラシオ原作、パールノベライズ、中井はるの訳、ほるぷ出版、1760円、小学5年生から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「ひげが ながすぎる ねこ」

 表紙には、やけにひげの長いしょんぼり顔のハチワレねこ。ページをめくってびっくり。ねこの「みゃあ」のひげの長さは想像以上! 踏んづけられたり、ラーメンの麺と間違って食べられそうになったり、行く先々でもいやなことだらけで災難ばかりだ。

 ながーいひげに翻弄(ほんろう)されるみゃあには本当に申し訳ないのだけれど、その困り顔がたまらない。絶対にひげにいやなことをしないから、ギューッとさせてほしい。キュートなひげに絡め取られるように何度もページを開いてしまう、最高にかわいい一冊。(北澤平祐作、講談社、1760円、5歳から)【丸善丸の内本店 兼森理恵さん】

「水は うたいます」

 理想の絵本とは、絵と言葉で綴(つづ)る詩のようなものかも。やさしい言葉で世界の本質をうたった詩人の一編の詩を、一冊でゆっくり味わう「まど・みちおの絵本」は、理想を具現化した貴いシリーズです。

 10年前、104歳で世を去った詩人の半世紀前の詩。「水」の豊かな表情を、画家のみずみずしい筆が奏でます。海のびょうびょう、雲のゆうゆう、雨のざんざか。巡り巡る水の姿に、大きな生命と永遠の時間が浮かび上がります。見開き1画面に1行ずつ、時代を超えた言葉と絵の協奏に聞き惚(ほ)れて。(まど・みちお詩、nakaban絵、理論社、2090円、小学校低学年から)【絵本評論家 広松由希子さん】=朝日新聞2024年2月24日掲載