第40回織田作之助賞の贈呈式が7日、大阪市内であり、「それは誠」(文芸春秋)で受賞した乗代雄介さん(37)が「いろいろなものに感謝しながら書けたことがうれしい」と語った。
修学旅行で同じ班になった高校生たちの東京での1日の冒険。家庭の事情を抱え、生き別れになったおじさんに会いにいこうとする主人公に、班のみんなが協力していく物語だ。
「歩くのが好きで、それを小説に生かしているつもりです」と受賞あいさつで乗代さん。各地を歩き、立ち止まって風景描写の練習をするうち、パッと物語が見える瞬間がある。今作はそれが東京都日野市、新選組ゆかりの街だった。
2カ月近く泊まり込み、街を歩き、朝昼晩の風景を見た。「書くことを肉体労働に近づけるんです」
「歩く体力と宿泊などのお金がかかるのが大変ですが」と笑いつつ、「(このような書き方をする作家は)ほかに思い当たらないが、それでも認めていただけたのは心強く思う」とさわやかに語った。(河合真美江)=朝日新聞2024年3月27日掲載