工場でパイナップルを加工する女性たちや笑顔の子供、にぎわう商店街……。米国統治下の沖縄で、米軍の心理作戦部隊が無償配布していたプロパガンダ誌「守礼の光」には、街の発展や暮らしの活気を伝える数々の写真が掲載されている。
『「守礼の光」が見た琉球』は、こうした写真を冷戦や教育といった七つのテーマに沿って抜粋、米軍の意図を読み解く注釈やコラムと共に再構成した書籍だ。
雑誌の創刊は1959年。軍用地の強権的な収用が引き起こした「島ぐるみ闘争」を受け、米軍が統治方針を転換した時期と重なると、本書を監修した歴史社会学者の古波蔵契さんは指摘する。
「米軍は、文化や歴史が違っても『近代化』という共通の理想を追うことができるはず、というメッセージを広めた。この雑誌は、米軍の『理想の沖縄』の進捗(しんちょく)記録のようなところがあります」
為政者の「理想」が推し進められる過程で、何が失われ、変わったのか。私たちの生きる今を見つめ直すことを促す一冊だ。(増田愛子)=朝日新聞2024年5月4日掲載