自らの生き方が問われたとき、人はどうするか。古代のブッダや孔子から現代まで、アジアに生きた約1万人を、170人超の研究者が描く『アジア人物史』全12巻(総監修・姜尚中)が完結した。
第12巻で取り上げるのは、鄧小平、ネルー、ナセル、アラファト、岸信介ら。そして、民主化を求め続け、死刑囚から韓国大統領になった金大中(キムデジュン)。正義を貫く人は「悲惨な最期を迎えたとしても、歴史のなかでは必ず勝者になる」と語っていた。
最後は、元沖縄県知事の大田昌秀だ。米軍用地の強制使用手続きの「代理署名」を拒否した。生き方を問われたぎりぎりの判断が、「自治・自立・自己決定権」を求める出発点になったという。人物から歴史を見て、それが今に続いていることを示す、このシリーズにふさわしい締めくくりだ。(石田祐樹)=朝日新聞2024年6月8日掲載