ISBN: 9784798178660
発売⽇: 2024/11/18
サイズ: 18.8×2.7cm/408p
「TwitterからXへ 世界から青い鳥が消えた日」 [著]カート・ワグナー
日本はX(旧ツイッター)が異常に好きな国。ユーザー数1位は本国アメリカだが、2位は他国を引き離し日本なのだ。
本書は共同創業者ジャック・ドーシーの若き日から、イーロン・マスクの買収による凋落(ちょうらく)までを辿(たど)るルポ。イケイケでスピード感ある現地の空気が伝わってくる。日本の国民的SNSは、実のところ、アメリカのエリート男性のネットワークを中心に動いている。古くからの友人や同僚に声をかけ、ポストを回す。
前半はドーシーがCEOに復帰する局面から。ツイッターが「有名人の拡声器」の機能を持つ以上、CEOも日々危険に晒(さら)される。ときに殺害予告も届く。
同社従業員の大半はリベラルで民主党支持。一方、2016年の大統領選中にドナルド・トランプは侮辱的で攻撃的な投稿を続け、支持者もトランプを手本に投稿した。これがツイッターでヘイトや差別をうながしたというくだりは重要だ。
トランプのアカウントは追放されたが、ドーシーはそれをやりすぎだと感じていた。一企業が言論のルールを策定し責任をとることに、違和感を覚えていたからだ。
後半はマスクを軸に、ツイッターをめぐる攻防が描かれる。マスクを敬愛するドーシーは買収を喜んだが、従業員たちは落胆。その半数が解雇され、多様性を担当したチームの6割が退職し、広告収入は半減した。人と人の繫(つな)がりを促すプロダクトの経営者には感情的知性が必要であるがマスクにはそれがない、と本書は手厳しい。
マスクはツイッターを私物化し、息子と同じ名であるエックスに変えた。結果、アメリカではユーザーが離れ、ニュースのための重要なSNSの地位を失った。
ツイッター廃人という俗語があるほど中毒者が続出した日本。われわれは、#XODUS(Xからの脱出)できるのだろうか。それとも、青い鳥が逃げた籠にとどまり続けるのか。
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Kurt Wagner ビジネスとテクノロジーを専門とするジャーナリスト。2013年からソーシャルメディアの動向を取材。シアトル近郊育ち。