「ワルイコいねが」
主人公の美海(みみ)は小学6年生。友だちに良い子と思われたくて、なかなか自分の思っていることを言えない。そんなある日、となりのクラスに秋田からの転校生アキトがやってくる。思ったことはすぐに口に出す上に、人が死ぬことに興味のあるアキトは、クラスでは評判が悪い。偶然、書道教室で一緒になった美海の目には、相手に合わせて自分の意見を言うのではなく、ストレートにものを言うアキトがうらやましく魅力的にうつる。
他人から見て何を考えているのかわからないアキトのような子の心の揺れが、正反対の友人・美海によって、しだいに明らかにされていくところが見事に描かれている。
秋田県のなまはげが「悪い子はいねぇが」といって子どもをこわがらせるのはなぜか。「悪い子じゃない」と信じてくれる人がいる。なまはげから守ってくれる人がいると気づかせてくれるからである。秋田のじっちゃにしっかり別れの言葉を言えなかったことを悔やんでいるアキトの思いはじっちゃに届くだろうか。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん)
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安東みきえ著、講談社、1650円、小学校高学年から
「ガラガラ がらくた!?」
木の上に泥と草と小枝で巣を作ったカササギ夫婦。でも巣に敷いたチラシ広告に刺激され、かわいい卵たちのためにもっと完璧な巣にしなくてはと物を集め出します。時計、靴下、ベビーカー、自転車4台……しまいには? 宣伝に煽(あお)られる物欲、子に注ぐ過剰な愛情。現代社会をチクリと刺しながら、ユーモアたっぷりに「ガラクタ」の削減と再生を促す物語です。商品広告が並ぶ見返しから、カバーの裏やソデ、奥付やバーコードの遊びに至るまで、楽しまなければもったいない、無駄なところのない絵本。(絵本評論家 広松由希子さん)
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エミリー・グラヴェット作、なかがわちひろ訳、BL出版、2090円、5歳から
「クジラがしんだら」
ここは深い深い海の底。真っ暗な中を、何かがゆるゆると下りてくる。一生を終えたクジラだ。半年間何も食べていなかったユメザメが、たちまち寄ってくる。サメがあけた穴に今度はコンゴウアナゴが殺到する。タカアシガニもウニもダイオウグソクムシもやってきて、久しぶりの宴(うたげ)が始まる。肉が食い尽くされても、ホネクイハナムシが骨に取りつき、やがて卵を産む。
死んだクジラが別の生き物たちの命を支えていることを示し、命のつながりについて伝えるノンフィクション絵本。巻末に解説あり。(翻訳家 さくまゆみこさん)
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江口絵理文、かわさきしゅんいち絵、藤原義弘監修、童心社、1980円、4、5歳から