1. HOME
  2. ニュース
  3. 「10代がえらぶ海外文学大賞」初開催 投票は9月26日まで

「10代がえらぶ海外文学大賞」初開催 投票は9月26日まで

 若い世代の投票で面白い海外文学を決める「10代がえらぶ海外文学大賞」(青少年読書推進機構主催)が今年初めて開催される。海外文学の魅力を広めたいと翻訳者らが企画し、投票を呼びかけている。

 対象作品は、2024年に出版された10代が主人公の翻訳作品(選考委員が翻訳したものは除く)。推薦作を広く募り、そこに選考委員の選んだ作品も加えて議論した結果、ノミネート作7冊が決まった。大賞作を選ぶ2次投票は、9月1~26日に、公式サイトで行われ、結果は10月に発表される予定だ。

 企画は、翻訳家の三辺律子さんの思いに、翻訳家の金原瑞人さんらが賛同したことで実現したという。書店に10代向けの海外文学をそろえた棚はないことが多く、三辺さんは「若い世代が海外文学に出会う場所があまりにもなく、もったいないという気持ちがあった」と話す。賞を通して、学校や書店にも輪を広げたい考えだ。

 三辺さんは、海外文学は子ども向けであっても、移民や人種、ジェンダーといった社会的な話題に切り込んだ作品が多いことが魅力の一つだと語る。「当事者性が高すぎると読みにくいこともあるが、海外の話なら客観的に読める。でも日本も同じかもしれないと少し思えるかもしれない」

 さらに今回のノミネート作について、「色んな国が舞台の作品が入っていて、うれしい驚きがあった」という。たとえば、「ソリアを森へ」はベトナムの自然保護活動家の若き日を描き、「ぼくの心は炎に焼かれる」は1950年代のケニアで暮らす人種の異なる2人の少年の話だ。

 7冊のうち、1冊でも読んだ10代の人なら、誰でも2次投票に参加できる。三辺さんは「読書には、合っている、合っていないという正解はない。どういう風に読んでもいいし、分からなくてもいい。とにかく手にとって読んでみてほしい」と呼びかけている。(堀越理菜)=朝日新聞2025年86日掲載

賞のノミネート作(50音順)

 あいだのわたし(岩波書店)
 すばやい澄んだ叫び(東京創元社)
 ソリアを森へ(すずき出版)
 ハリネズミ・モンテカルロ食人記・森の中の林(アストラハウス)
 ぼくの心は炎に焼かれる(徳間書店)
 闇に願いを(静山社)
 わたしの名前はオクトーバー(評論社)