「スポーツ・クリティーク」書評 自ら実践、現場に飛んで考える
ISBN: 9784790718055
発売⽇: 2026/01/09
サイズ: 13×18.6cm/222p
「スポーツ・クリティーク」 [著]町田樹
〝りくりゅう〟が勝った。すばらしい逆転のドラマ。何度も映像を見た。そして思った。そうだ、町田樹はこれを何と批評するのだろうかと。「スポーツプレー批評」なのか。果たして「スポーツ社会・文化批評」に包摂されるものなのか。
フィギュアスケートのアスリート町田樹が、自ら活躍中のスポーツの世界を、一転して研究者になって書いてみせる。彼のセカンド・キャリアへの挑戦の発言。すごいなあ、一身にして二世を生きるというが、この若人もそうなのか。本書は彼の毎日新聞のコラムなどを集大成したものだ。決して読みやすいコラムではない。いや無論、読者をケムに巻く類いの難解さはない。
でも、楽じゃない。彼の考え方、論理の道筋をきちんと追わないと、彼が何を主張したいのかが見えてこないからだ。だからとにかくどこからでもよい。まずは彼がどこからどこへ行こうとしているのかを、しっかり把握することだ。なぜ実況中継は空転するのか? なぜ今スケート場クライシスなのか? いや、オリンピックのレガシーとは何か? 町田は常に現場に飛んで考える。
そこで〝りくりゅう〟にいま一度戻ろう。スポーツで感動を与えられるのか否か? さあどうするのだ! 町田の当座の回答は記されるものの、彼は私の横に立って、私の答えを待っている。そんな緊張感が町田のコラムにはある。
「スポーツと教育」では、若いスポーツ予備軍の育て方を論じて若者教育の難しさを問う。スケートへの自らの再挑戦のプロセスや、バレエに淫する時の自己との闘い、いやとにかく町田は自らの身体と精神への負荷を自ら実践し、それを真っすぐに伝えてくれる。何がよくて何がダメかをすぐ文章にする。研究者業界に身を置いた者なら誰でもドギマギ躊躇(ちゅうちょ)する暇(いとま)を町田は持たない。そこが「今を生きる、今を書く」彼の行為の神髄なのだ。
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まちだ・たつき 1990年生まれ。フィギュアスケート競技者を経て、国学院大准教授(スポーツ文化論、身体芸術論)。