ISBN: 9784065425237
発売⽇: 2026/01/22
サイズ: 13.6×19.6cm/336p
「仮放免の子どもたち」 [著]池尾伸一
やりきれない。本書を読み終えた直後、憤りが胸の頂を突き上げた。だって、ひどいじゃないか。日本で生きていく「資格」がないと、国から宣告される人たちがいるのだ。一体、何をしたというのか。様々な事情があってようやく辿(たど)り着いた日本で、普通に生活したいと望んだだけなのに「資格」を与えられず、強制送還に怯えながら生きていかねばならないのだ。
入管施設への収容を一時的に解除されている状態の外国人――仮放免の人々は、在留資格がないばかりに就労を禁止され、福祉の利用もできない。とりわけ深刻な状況にあるのが子どもたちだ。育った環境に何ら責任がないにもかかわらず、必要以上の「罰」を負わされる。移動が制限され、多くの場合、就職や進学の道も閉ざされる。「不法滞在」のレッテルを貼られ、ヘイトの標的となることも珍しくない。
著者はそうした「仮放免の子どもたち」の不安や苦痛に向き合い、慎重に取材を重ねながら社会の不条理をあぶり出す。
在留資格がないことで、通っていた小学校から「除籍処分」を受けたクルド人少女がいる。大学進学を望んでいたナイジェリア人少女は、入管職員から、大人になっても仕事はできないのだから「絶対に期待するんじゃないよ」と釘を刺された。デマや差別の被害にあう子どもたちもいる。
本書では「夢を持つ権利」を奪われた様々な子どもたちの事例が報告される。
いま、排外主義の勢いは増すばかりだ。政府は「不法滞在者ゼロプラン」の政策を掲げ、外国人の〝追い出し〟に血道を上げる。各地で移民排斥を訴えるデモも相次ぐ。
だからこそ、デマに拠(よ)らず、仮放免者の生身の姿に迫った本書に価値がある。悲惨な状況に愕然(がくぜん)としながら、しかし、力強く生きる子どもたちの姿にも、私は激しく心を揺さぶられた。
生きていこう、ともに。子どもたちに、そう呼びかけたくなったのだ。
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いけお・しんいち 東京新聞編集委員。入管行政や外国人との共生問題をテーマに取材する。著書に『魂の発電所』など。