いもとようこさんの昔話・名作絵本シリーズ 大人にも読んでほしい、やさしい心がいっぱい詰まっているお話
――いもとさんは、子どもの頃から昔話がお好きだったのですか?
私が初めて絵本を読んでもらったのは、3才ぐらいの頃。ふとんの中で父が「さるかにがっせん」を読んでくれました。「はやくめをだせ かきのたね、ださぬとはさみで ちょんぎるぞ!」の繰り返しが楽しくて、たった一度だったけれど、よく覚えています。
毎年、春になると桜の花が満開。日本のほとんどの人がお花見をします。枯れ木に花を咲かせたように いっせいに咲きます。これを見ていると「はなさかじいさん」のお話が生まれてきたのは当然のことのように私には思えます。
「かぐやひめ」のお話も竹は中が空っぽ、この中に小さな女の子がちょこんと座っていてもおかしくない。竹を切るたびに小判がざっくざっくと出てきそうだ。「おむすびころりん」も、おむすびはころころ転びやすいし、お米はネズミたちが大好きなもの。こんなお話を作ってしまうなんて、昔の人の想像力はすごいですね。
――昔話ならではの残酷な物語も、いもとさんの温かい絵や言葉で読んでいくと、人間の奥深い部分を感じて心に入ってくる方が多いと感じます。こういった人間の理不尽さなども、絵本で表現していきたいとお考えですか?
「つるのおんがえし」「ゆきおんな」などは、人間の優しさ、残酷さを表現したすばらしいお話です。
たとえば「つるのおんがえし」。ひとりの心やさしい男が、ある日、罠にかかって苦しんでいる一羽の鶴を助けてやります。ある夜のこと、「道に迷って困っています」と、男の家に美しい娘がやってきます。身寄りもないというので、男はしばらくおいてやることにします。やさしく働き者の娘は、やがて男の妻になりますが、暮らしは貧しいままでした。
「わたしがはたを織ります。でも、決して部屋はのぞかないでください」。ある日、妻はそういうと、部屋にこもって、はたを織り、見事な反物を作り上げます。町でそれを売り大金を手にした男は、それから妻にはたを織らせ続けるようになりました。
「これが最後です」。そういって妻ははた織り部屋に入りますが、五日過ぎても出てきません。しびれを切らした男は約束を破って、ついに部屋をのぞいてしまいます。そこには自分の羽根を抜き取っては、はたを織る、一羽のやせ細った鶴の姿があったのでした。
――はじめは貧しいけれど心はやさしい男だったのに、お金を手にしてから、すっかり変わってしまいます。
なんて悲しいお話でしょう。理不尽さを絵本で表現していきたいというより、話自体がすでに理不尽。昔話が教える理不尽さ、人のさまをそのまま絵本で伝えているだけです。
でも鶴の反物を描くのは難しかったー。何せ鶴の羽根でできているのですから……。
一方で、昔話にはおもしろい話もたくさんあります。「みやこかがみ」「おいもころころ」「あかちゃんになったおばあさん」「びんぼうがみとふくのかみ」など、いっぱいあります。日本の昔話は日本人の「あったかくて、やさしい心」がいっぱい詰まっています。私はこの日本の心が大好きです。
最新作の『おんぶおばけ』は、おんぶをねだるおばけが出るという峠へ向かったおばあちゃんが、出てきたおばけをおんぶして子守うたを歌ってあげるお話です。「こんなおばあちゃん、いるんじゃないかなあ〜」と楽しく描きました。
――「日本むかしばなし」シリーズと並行して「世界の名作絵本」シリーズも続けていらっしゃいますね。
世界のお話では「青い鳥」「はだかのおうさま」しあわせの王子」「にんぎょひめ」「スーフと白い馬」「賢者のおくりもの」「さいごの一葉」が大好きです。この2シリーズのほか、日本の名作を集めたシリーズもあります。その中では「ないた赤おに」「ごんぎつね」「注文の多い料理店」「さんしょっ子」が大好きです。どれもこれもすばらしい作品がいっぱいで、次から次へと描きたくなります。
――大人も絵本を読んで、昔話や名作に心を動かしてほしいとお考えですか?
満開の桜を見て、どのくらいの人が「はなさかじいさん」の話を思い出すでしょうか? また、そのお話を話せるでしょうか?
「枯れ木に花を咲かせましょう!という話だろ。知ってるよ!」とほとんどの人は答えます。「じゃ、話してみて!」というと、残念ながら、ほとんどの人は話せません。もったいないことです。子どもの頃に読んでもらったお話を大人になって改めて読むと、その深い意味、作った人の気持ちなど、より深く味わえて楽しいものです。
――大人の方からはどんな感想をいただきますか?
読者の方からの感想は、「私の想いが伝わったんだ!」と、とてもうれしく思います。いただいたものを、少し紹介しますね。
――アニメーションや電子書籍など名作や昔話を伝える方法は他にもありますが、絵本で伝える良さはどんなところにあると考えますか
私は、遠い昔から受け継いできたすばらしいお話たちを、次の世代へ伝えていきたいのです。昨今、みんな紙から離れていっています。でも、やっぱり絵本のお話は、紙の本でじっくり絵を見ながら味わうのがいちばんです!