ますだゆうこさんの絵本「こいのぼり ぐんぐん こどもの日!」 行事の由来や豆知識を楽しく学べる
——爽やかな青空が広がる5月。体が弱く、外でなかなか遊べないたつやが、窓から見えるこいのぼりを眺めていると、こいのぼりが話しかけてきて——。音楽ユニット「ケロポンズ」のますだゆうこさんが手がけた『こいのぼり ぐんぐん こどもの日!』(絵:たちもとみちこ/文溪堂)は、「もっと知りたい! 行事の絵本」シリーズ(文溪堂)の一冊。たつやとこいのぼりのアオの冒険物語を通じて、「こどもの日」の由来や過ごし方について、楽しみながら理解が深まる絵本だ。
「行事の絵本」シリーズ第1作は2008年に刊行した『ハロウィン ドキドキ おばけの日!』(絵:たちもとみちこ/文溪堂)。当時、英語教室や地域のイベントなどで子どもたちの間でもハロウィンが注目されるようになっていたのですが、「ハロウィンの由来」に焦点を当てた絵本はあまりなかったんですね。この絵本が好評を受けたことをきっかけに、1月はお正月、2月は節分、3月はひなまつり、4月はイースター……など、和洋問わず季節の行事を網羅した全12巻のシリーズになりました。
『こいのぼり ぐんぐん こどもの日!』の主人公は、病気がちで療養中のたつやくん。中国に伝わる「鯉の滝登り伝説」をベースに「健やかな子どもに成長してほしい」というこいのぼりに託された願いから、たつやくんとアオの物語のアイデアが浮かびました。
たつやくんがこいのぼりのアオと一緒にいろいろな試練を乗り越え、たくましく元気になっていく——というストーリーに重ね合わせて、「こどもの日」に込められた思いが自然に感じ取れるような内容にしたいと思ったんです。「滝登り」に挑戦して傷だらけになったアオの治療のために、たつやくんが勇気を出して、ショウブやヨモギの葉を探すところは、ぜひ描きたかったシーンですね。
——シリーズ全作を通して絵を担当するのはたちもとみちこさん。多種多様な画材で描いた素材をコラージュした、カラフルな表現は見ているだけで心が浮き立つ。
たちもとさんに制作方法を聞いたことがあるのですが、いろいろな画材を使った絵やテクスチャーの違う紙などの素材を組み合わせて制作されているんですね。一つひとつの絵にものすごく手間がかけられている。たちもとさん独特の鮮やかな色合いはこうしてつくられているんだな、と初めて知ったときは感動しました。
『こいのぼり ぐんぐん こどもの日!』のなかでも私が特に好きなのは、アオくんがついに龍となる場面でしょうか。後光がさす龍の姿に力強さを感じると同時に、目や表情にはなんともいえない愛嬌も感じられて、見ているだけで元気をもらえる絵だと思います。
——行事の由来や過ごし方などの「豆知識」ページが差し挟まれるのも「行事の絵本」シリーズの特徴の一つ。本書にも柏もちのレシピやこいのぼりの工作方法など、家庭で行事を楽しむためのさまざまなヒントが散りばめられている。
毎回、編集部から行事についての資料をもらって熟読するのですが、今回の本で初めて知ったのは「柏もち」の由来。柏の木は新芽が出ないと古い葉っぱが落ちないことから、柏の葉が「子どもが大きくなるまで親は亡くならない」という意味を持つ縁起物とされ、そこから柏もちを食べるようになったそうです。
端午の節句にショウブやヨモギをお風呂に入れること、柏もちを食べること、こいのぼりや五月人形を飾ること……など、今も伝わる風習には、すべてにちゃんと意味がある。昔から語り継がれてきたことを、次の世代に伝えていくことを大事にしていきたいなあと感じます。「行事の絵本」シリーズでは、「おはなし」の部分と「豆知識」の部分の両方を楽しみながら読んでいただいて、大人も子どもも「そうだったのか!」という新たな発見があるとうれしいですね。
3〜4歳など、まだ小さいお子さんに「行事の絵本」シリーズを読み聞かせするときは、文章のすべてを正確に読まなくても大丈夫。絵を眺めながら指さして「こいのぼりの名前はアオくんって言うんだって!」「柏もち、おいしそうだね。こどもの日に食べようね」など、行事の楽しさが伝われば十分です。豆知識のところだけピックアップして読んでもいいし、お子さんの興味に合わせて、その日の気分で自由に楽しんでいただければと思います。