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「小さなパンダ」書評 人気者の不思議さに科学で迫る

評者: 田島木綿子 / 朝⽇新聞掲載:2026年05月23日
小さなパンダ: レッサーパンダの謎 著者:佐藤 淳 出版社:東京大学出版会 ジャンル:科学

ISBN: 9784130639668
発売⽇: 2025/12/24
サイズ: 18.8×5cm/192p

「小さなパンダ」 [著]佐藤淳

 今やジャイアントパンダと人気を二分する勢いのある、レッサーパンダに焦点をあてたのが本書である。その不思議さを、可愛いと思わせる顔立ちや四肢の大きさなども含めて、科学的に解説する。
 系統的にはジャイアントパンダが属するクマ科でもなく、他の食肉目であるイタチ科でもアライグマ科でもなく、独立したレッサーパンダ科を確立しているようだ。食肉目にもかかわらず、竹が主食の植物食性であることは、進化の結果としてのいきものの多様性や適応力を示している。
 本書は、レッサーパンダを取り上げながら、分類学、系統学、生態学、哺乳類学など、いきものを理解するうえで重要な基礎学問への入門編としても大いに役立ちそうである。特に目覚ましい発展を遂げる遺伝子解析は、現在までの変遷を専門用語を交えて詳しく解説する。ミトコンドリアDNAは進化速度が速く核DNAは遅いことなどを知ると、だから最近の研究論文には両者を解析する内容が多いのかと、改めて納得できる。
 さらに、植物食性でありながら消化器は短くて肉食のネコに近く、竹から栄養源を効率よく吸収できる構造ではないという。そのため、たくさん食べる必要がある。動物園で見かける彼らが食べてばかりいる印象を我々に与えることには意味があるのだ。
 レッサーパンダは多くの動物園で飼育されているが、野生個体の生息域は中国やネパール、インドなどの山岳地帯の隔離地域に限定される。出会うことが難しい野生動物を科学的に解明しようとするところも評価に値する。絶滅危惧種に指定され、生息域の国が手厚い保護政策や生態保全に取り組んでいるが、人間の都合でいきものを絶滅寸前に追い込んでいる。
 私が専門とするイルカやクジラもそれなりの人気者であるが、本書を読むと、パンダ(実は恐竜も)には到底及ばないことを改めて認識した。 
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さとう・じゅん 1976年生まれ。福山大教授。専門は進化生物学。25年度の日本哺乳類学会賞を受賞。