第13回「料理レシピ本大賞 in Japan」受賞作品
■料理部門
【大賞】
【準大賞】
【入賞】
■お菓子部門
【大賞】
■こどもの本賞
■コミック賞
■プロの選んだレシピ賞
■ニュースなレシピ賞
料理部門大賞は、頑張りすぎない「生きるための弁当」
料理部門大賞に輝いたのは、料理研究家・リュウジさんにとって初めての弁当レシピ本『リュウジ式 生きるための弁当』。料理部門大賞の受賞は、『ひと口で人間をダメにするウマさ! リュウジ式 悪魔のレシピ』『リュウジ式至高のレシピ』に続いて3度目です。料理レシピ本大賞では、史上初となる6年連続、通算6度目の受賞となりました。
本書が目指したのは、物価高で忙しい毎日にも続けられる「安い・早い・うまい」弁当。冷凍食品や電子レンジも積極的に活用し、「弁当はおかず一品でもいい」という発想で、103品のレシピを掲載しています。買い物リストや献立早見表など、実用的な情報も充実しています。
実は弁当を作ることが「めちゃくちゃ嫌いだった」というリュウジさん。これまで弁当本は出さないと話していたものの、会社員時代の自分なら、どんな弁当であれば作って持っていけるかを考えたことが、本書の出発点になったといいます。
「皆さんにも気取らず、気張らず、簡単なお弁当を楽しんでほしい。こんな弁当でも恥ずかしくない、という世の中にしたいと思って、この本を作りました」
たびたび話題となる発言にも触れながら、受賞するたびに「自分の根幹は料理なのだと思い出させてもらえる」と語ったリュウジさん。「何度いただいてもうれしい」と、喜びをかみしめていました。
お菓子作り40年の技を詰め込んだ「決定版」
お菓子部門の大賞は、東京・小金井市の洋菓子店「オーブン・ミトン」のオーナーパティシエ、小嶋ルミさんによる『せっかく作るなら、一生ものの、おいしいお菓子 決定版』が受賞しました。
スポンジやシフォンケーキ、クッキーなど、お菓子の仕上がりを左右する「混ぜ方」に焦点を当てた一冊です。なぜ失敗するのかを曖昧にせず、材料や道具の扱い方から、菓子ごとに異なる混ぜ方まで丁寧に解説。動画も活用しながら、初心者でも本格的な味と食感を目指せる構成となっています。
パティシエとして約40年、これまでに15冊ほどの本を手がけてきた小嶋さんですが、「賞とはまったく無縁だと思っていたので、こんなときが来るとは思ってもみませんでした」とのこと。受賞を家族に報告したところ、子どもから「ママ、生きててよかったね」と言われたというエピソードを披露し、会場を沸かせました。
本書は、これまでのレシピ本を作るたびに見直し、改善してきたポイントの数々を集約し、お菓子作り初心者でも分かりやすいように制作。ボウルを体の正面ではなく利き手側に置くことで混ぜ方が安定するなど、従来の常識にとらわれない工夫も紹介しています。「お菓子業界の常識を変えたい」と、胸の内に秘めた静かな野望についても語りました。
健康とおいしさを両立した「ズボラ飯」
料理部門の準大賞には、はらぺこグリズリーさんの『世界一美味しくて健康的なズボラ飯 えっ、全レシピ塩分2.5g脂質20g以下!?』が選ばれました。
掲載されている全102品を、タイトル通り、塩分2.5g以下、脂質20g以下に設計。それでいて、カレーや唐揚げ、ラーメンなど、食べ応えのある料理をそろえています。管理栄養士の監修を受け、初心者でも失敗しにくい工程写真も掲載塩分と脂質に配慮しながら、おいしさと手軽さも追求したレシピ集です。
はらぺこグリズリーさんは、「自分や大切な人を、食を通していたわることができれば」という思いで作ったと説明。健康のために我慢するのではなく、食べたい料理を楽しみながら体を思いやる、新しい選択肢を示しました。
定番料理、せいろ蒸し、一汁三菜 毎日の食卓を助ける入賞3作
料理部門入賞となったのは、『長谷川あかりの「あたらしい」きほんの料理』『ズボラなせいろ蒸し』『一汁三菜おぼん献立』の3作です。
長谷川あかりさんの『長谷川あかりの「あたらしい」きほんの料理』は、から揚げや肉じゃが、ハンバーグといった定番の家庭料理を、現代の暮らしに合わせて再解釈。「材料を減らす」「手間を省く」「発想を変える」といった工夫によって、作る人の負担を軽くしながら、繰り返し食べたくなる味を提案しています。
長谷川さんは「私の集大成と言ってもいい一冊」と紹介し、「これまでの活動を肯定してもらえたようで、とても幸せです」と笑顔を見せました。
らむさんの『ズボラなせいろ蒸し』は、野菜や肉、麺類まで、せいろ一つで作れる64品を収録。せいろの選び方や使い方、手入れ方法も丁寧に解説しています。ほったらかしで調理でき、素材のうま味を生かせる点も本書の特徴です。
「私は30年間、主婦として家族の料理を作ってきただけ」と話す、らむさん。SNSには「野菜を食べなかった子どもが、せいろで蒸したら食べてくれた」といった声が数多く届くそうで、それが新しいレシピを考える励みになっていると明かしました。
Hidekaさんの『一汁三菜おぼん献立』は、身近な食材とシンプルな調味料で、主菜、副菜、汁物を無理なく組み合わせる献立集。調理の段取りに加え、盛り付けや器選び、おぼんを使った演出も紹介しています。
「料理レシピ本大賞で入賞することは、夢の一つでした」と喜びを語ったHidekaさん。「日々、献立に悩んでいる方の役に立てるよう、これからも頑張りたい」と話しました。
料理する楽しさから季節の味わいまで、広がるレシピ本の世界
ジャンル賞の「こどもの本賞」には、新谷友里江さんの『ぜ~んぶひとりでできちゃう! 小学生のお料理ブック』、コミック賞は、にいざかにいこさんの『季節が好きなわたしとマダム』が受賞。料理の専門家で構成される特別選考委員が選ぶ「プロの選んだレシピ賞」には、ウー・ウェンさんの『最小限の材料でおいしく作る9のこつ』が選ばれました。ウー・ウェンさんは、2023年のエッセイ賞に続く2度目の受賞。「これからも自分の経験を生かして、皆さんのお役に立てるように頑張りたい」と、喜びを語りました。
有働由美子さんの「おもてなし料理」がレシピ本に
旬の人、時代を担う人の著作を対象とする「ニュースなレシピ賞」には、有働由美子さん初のレシピ本『女将 有働由美子のおつまみレシピ帖』が選ばれました。本書は、有働さんが女将となり、ゲストに手料理を振る舞うテレビ番組「おしゃべり小料理ゆみこ」(MBS、関西ローカル)から生まれた一冊。火を使わず手早く作れるものから、季節の食材を使った贅沢な一品、締めの麺やごはんまで59品を収録しています。
料理を本格的に始めたのは50代になってからだという有働さん。外へ飲みに行く体力がなくなり、自宅で自分のためにおつまみを作るようになったことが、料理の腕を磨くきっかけになったそうです。作りすぎた料理をご近所に配るうちに、誰かに食べてもらう「おもてなし料理」へ発展していきました。
「二日酔いでも、夜にはビールを一本くらいは飲みたい」という自身の体験から生まれたレシピも掲載。一方、飲みながら調理してけがをした経験から、「今はしらふのうちに作って、食べるときに飲みます。飲みながら作るのはおすすめしません」と、実感のこもった注意も呼びかけました。
会場では、本書に掲載された「なすの重ね焼き」を天野さんが試食。なすと豚肉の脂の相性を絶賛し、「さまざまな人生を重ねてきた有働さんの味」とコメント。「有働の重ね焼き」と命名すると、有働さんは「シンプルな人生でございます」と返し、再び笑いを誘いました。
簡単に作るのは「手抜き」ではなく工夫
表彰式の最後に、天野さんは、リュウジさんが受賞作の中で打ち明けた「『手抜き』とか『ズボラ』って言葉があるけど、ぽくは好きじゃありません」という言葉を紹介。今年の受賞作にも通じる、料理の効率と工夫について語りました。
「仕事だったら効率を上げることは褒められるのに、料理だけは効率よくやると『手抜き』と言われてしまうのは、考えさせられます。でも、長い間レシピ本を見てきて、料理にはいろいろな工夫や発見がまだまだあるんだなと実感しています」(天野さん)
短い時間や少ない材料で料理を作ることは、単なる「手抜き」ではなく、忙しい日々の中で料理を続けるための工夫でもあります。今年の受賞作には、頑張りすぎない料理を肯定し、毎日の食卓を豊かにするアイデアが詰まっていました。
受賞作品を集めたフェアは、9月10日から全国の書店で順次開催されています。「今日、何を作ろう」と迷ったとき、自分の暮らしに寄り添ってくれる一冊を探してみてはいかがでしょうか。