関根知未さんの絵本「ミニカーたんけんたい」 12台がずらり並んで、家の中を大冒険
―― 「ブォーン ブオン」家の中を探検するのは、スポーツカーにパトカー、ゴミ収集車、ショベルカーなど、12台のミニカーたち。犬のトンネルをくぐり、ダイニングテーブルで果物を見つけたり、ピアノの上を走ったり、一列に並んで進みます。子どもがミニカー遊びをしている光景が目に浮かぶような関根知未さんの絵本『ミニカーたんけんたい』(アリス館)。作品のアイデアは、ミニカーを並べて遊ぶお子さんの姿から生まれたという。
以前、フレーベル館の月刊保育絵本「キンダーブック2」で、裏表紙の連載を担当させてもらって、毎月お店をテーマにしたイラストを描いていました。ねずみのミニカー屋さんを描いたときに、アリス館の編集者の郷原莉緒さんが見てくれて、とても気に入ってくださって、「ミニカーの絵本を作りませんか?」とお声がけいただいたのがはじまりです。
実は車を描くのが苦手で、ミニカー屋さんの絵もすごく大変で時間もかかったので、最初は「ミニカーか……」と思ったのですが、当時2歳だった長男がミニカーで遊んでいたこともあって、描いてみようという気持ちになりました。郷原さんのお子さんもミニカーで遊ぶのが好きで、「子どもって、ミニカーを並べるのが好きだよね」「ミニカーが並んでいる絵もかわいいね」という話から、ミニカーがずらっと並ぶ絵本にしようということになりました。
―― 最初に考えたのは、ミニカーたちが家を抜け出し、外の世界を探検するお話だった。
低学年向けの絵本を想定して、ミニカーが虫と友だちになったり、風船をつけて空を飛んだりと、全く違う世界観のお話を考えていました。でも、なかなかうまくいかなくて。何度目かのラフに「ブオン、ブオン」という擬音を入れたら、郷原さんが「とてもいいから、もっと擬音を入れてリズミカルにして、低年齢向けの絵本にしてみたらどうか」と提案してくれて、方向転換をしました。もっとわかりやすく、すっきりした物語を作るために、舞台をどこにしようか考えていたとき、郷原さんに私の絵本作品の部屋の絵が好きだと言っていただいたのを思い出して、コレだと。部屋を描けばいいんだと思って、家の中を舞台にすることにしました。
家の中だったら、うちもワンコがいるので犬がいたらいいなとか、ミニカーだからこそ見える視点として人間には見えないねずみの穴が見えるかもしれないとか、そこからはアイデアが広がってスムーズに物語を作っていけました。「子ども部屋は入れたいな」「ダイニングテーブルでなにかおちゃめなことをさせたいからリビングは必要だな」と、お話を考えながら探検する部屋を考えていきました。最初の2ページを描いたところで、間取りを決めないとつじつまが合わなくなると気づいて、間取りも考えました。
―― 登場するミニカーは12台。どんな車を登場させるか選定にも気を配ったという。
お話の中でそれぞれの車ならではの特性や機能を生かしたいと思ったので、クレーン車、フォークリフト、ショベルカー、ピックアップトラックは入れることにしました。それから、子どもからの認知度も高いパトカーとゴミ収集車。あとは、全体のバランスと、読んだ子どもたちが、どれか一台は「この車好き」と言ってもらえるように、かわいいもの、かっこいいものなどを考えました。作品のテーマの一つが「ミニカーを並べる」ことだったので、絵本を開いたときに多すぎず少なすぎずと考えて12台になりました。
子どもがミニカーを並べるのが好きというのは、息子を見ていて初めて気づきました。私も子どもの頃、車のおもちゃを持っていたので、車に人形を乗せて遊んでいましたが、車を並べて遊ぶことはなかったです。息子は横に並べたり、縦に並べたり、積み木で駐車場を作って並べたりしています。コレクション魂なんでしょうかね? ブツブツ何か喋りながらやっていますが、物語を作っているという感じではなさそうです。一緒にアイスクリーム屋さんごっこをしたときも、私は対話をするんですけど、彼は黙々とアイスクリームを作っていました。遊び方の違いも面白いですね。
―― 車が主人公の絵本はたくさんあるが、本作は「ミニカー」が主役というのがこだわりだ。
家にあるおもちゃと絵本の中のミニカーを重ねて想像しながら読めるのがよかったのかなと思っています。最初は、車に目を付けようか悩みましたが、付けなくて正解だったなと。目を付けてしまうと、自分の持っているミニカーとちょっと離れちゃうのかなと思って。付けないほうが「これ、ボクのうちにもある」という親近感が湧くのかなと思いました。
一方で、市販されている特定の商品と同じデザインにならないように、いろんなミニカーを参考にしました。車を描くのは苦手なので、1台ずつ並べて、いろんな角度から写真を撮って、見え方がおかしくないか確認しながら何度も描き直しました。色鉛筆で描いているので、どのページでも同じ色になるように、色番号をメモしながら注意して描きました。デジタルで描くこともありますが、なんとなくアナログのほうがより温かみがあるような気がして、なるべく手で描いています。
―― 自身で気に入っているのは、ミニカーたちがお絵描き遊びをして汚れてしまった場面だそう。
それまでのお話の流れでは、ミニカーたちがどんな子たちなのかわからないけど、ここで初めておちゃめさが出たかなと思って。遊んで「こうなっちゃった」と報告するわけでもなく、「えへへのへ」で済ましている感じも好きですね。悪いことを取り締まるはずのパトカーも、一緒に遊んじゃっているところも気に入っています。
ミニカーたちが主人公ですが、かっこいい絵本ではなく、かわいい絵本を描きたいという思いがあったので、動物をたくさん出すことも考えていました。ミニカーが無機質で表情もないから、動物を入れたら物語に温かみが出るんじゃないかなと思って。初めは、猫も描いていましたが、郷原さんに「動物が多すぎるかもしれませんね」って言われて、引っ込めました(笑)。ねずみの家もかわいくしたくてドアをつけていたんですけど、「それだとファンタジーすぎるかもしれません」と言われて、リアルな穴に。読者からは、「こんなきれいなお家なのに、ねずみがいるの?」という感想もありましたが、これはファンタジーだから!という気持ちで(笑)。私は、映画「レミーのおいしいレストラン」が大好きなんですが、あれも「ねずみが料理をする」って考えるとちょっと気になるかもしれませんが、お話として成立しているし、こちらも大丈夫だと思っています(笑)。
―― 一列に並んで部屋の中を探検するミニカーたちの姿が人気となり、続編『よるのミニカーたんけんたい』(アリス館)も刊行された。
これだけ人気になるとは思っていなくて、子どもたちのミニカー愛が強いというのがすごくわかりました。「家のミニカーで、『ミニカーたんけんたい』の真似をしています」とか、「子どもが初めて自分で選んだ絵本です」という感想もいただいて、すごくうれしかったですね。
続編は、郷原さんから「ねずみさんにお洋服を着せたい」というリクエストがあって、私も動物に洋服を着せるのは好きなので、その展開にするにはどうすればいいかなと考えました。服を着せるなら、おもちゃの人形の服を着せるのが自然だなと思って、それをするには家の人が寝ている夜がいいと、夜の探検になりました。夜だからこその変化として、車のライトをつけました。普通のミニカーはライトがつかないものも多いので、子どもたちが「違う」となったら嫌だなと思いつつ、絵本だから許してください!という気持ちで描きました。
ふたりの息子は8歳と6歳になりましたが、今も寝かしつけで絵本を読むときに選んできてくれることがあって、うれしいです。ゴマをすってるのかもしれませんが(笑)。でも、実はふたりとも、もっとギラギラして変形するような車が好きで、「もっとかっこいい車がいい」と言われます(笑)。
―― イラストレーターとして活動しながら、絵本作家としても活躍の場を広げてきた関根さん。絵本の仕事は憧れだったという。
いつか絵本の仕事をしたいと思っていました。デビュー作『ドーナツやさんはじめました』(教育画劇)ができあがったときは、うれしくて涙が出ました。イラストレーターの仕事は、依頼されて描いて納品と、ひとりで完結することが多かったのですが、絵本は編集者さんと二人三脚で作っていって、印刷会社や製本会社の方、営業さんや書店員さん、いろんな方が関わってくれているのが見えて、感謝の気持ちでいっぱいでした。人と人とのつながりが見えて、経験できてよかったなと思っています。これからも、楽しさとかわいらしさがある絵本を作っていきたいなと思います。