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「双蛇密室」書評 絶質か批判か 驚天動地のトリック

評者: 末國善己 / 朝⽇新聞掲載:2017年05月14日
双蛇密室 (講談社ノベルス) 著者:早坂吝 出版社:講談社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784062990943
発売⽇: 2017/04/06
サイズ: 18cm/173p

双蛇密室 [著]早坂吝

 緻密(ちみつ)なロジック、おバカなトリック、エロが一体となった早坂吝(やぶさか)のデビュー作『○○○○○○○○殺人事件』は衝撃的だった。同書に初登場した援交探偵らいちシリーズの新作は、援交の客・藍川の過去に絡む二つの密室が描かれている。
 かつて藍川の母・誉(ほまれ)と内縁関係だったSM作家が密室で殺された。作家にも、同じ部屋で倒れていたが一命をとりとめた誉にも蛇に噛(か)まれたような傷があるも、雨でぬかるんだ建物の周囲には、犯人の足跡も、蛇が逃げた跡もなかった。
 結婚し、藍川を生んだ誉は、マンションの27階で暮らし始める。帰宅した誉は、密室状態の部屋で、赤ん坊の藍川が2匹の蛇に襲われているのを目にする。
 本書の驚天動地のトリックには、絶賛も、批判もあると思うが、空前絶後なのは間違いないのでミステリー好きなら必読だ。たとえ否定派でも、罪とは、真実とは、探偵の役割とは何かを問うミステリー論の部分には感銘を受けるだろう。