「ボコ・ハラム」書評 「世直し集団」だったはずが
評者: 円城塔
/ 朝⽇新聞掲載:2017年09月10日
ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織
著者:白戸圭一
出版社:新潮社
ジャンル:社会・時事・政治・行政
ISBN: 9784103511519
発売⽇: 2017/07/18
サイズ: 19cm/203p
ボコ・ハラム―イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織 [著]白戸圭一
交通機関が発達し、情報が一瞬で地球をめぐる時代となっても、遠い場所のできごとには、どこか他人ごとという雰囲気が漂う。
大きな事件を耳にしても、自分の常識の範囲内でおおよそこんなところだろうと見当をつけて満足してしまいがちである。
2014年、アフリカでとある武装集団が大勢の女生徒を連れ去り、「少女たちを売り飛ばす」と宣言する映像が世界に流れた。
この映像を見て、いわゆる国際テロ組織がアフリカに進出したのだなと考えた人も多いのではないか。
このボコ・ハラムはしかしもともと「世直し集団」として期待を集めた組織であったらしい。
本書が扱うのはボコ・ハラム成立の経緯だけにとどまらず、アフリカ全体における紛争の構造、その報道のありかたである。
遠く離れたできごとにも無論、細部があって事情がある。地理的距離にしばられた興味の持ち方は、時代に取り残されつつあるようである。