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政治家?政治屋?見極めよう ジャーナリスト・池上彰さん@町田市立成瀬中央小(東京)

 米大統領就任から1年。「トランプ大統領の印象は?」と池上彰さんが尋ねると、成瀬中央小5年の面々からは「発言ばかり注目されるけど何もやってない」「コメントが暴力的」と痛烈な意見が飛び出した。
 「日本人の僕らは『あんな人が大統領で大丈夫なの?』と疑問に思うよね。確かに大統領には大きな権限が与えられるけれど、その一方で、独裁的な力を持てない仕組みがアメリカにはある」
 池上さんは黒板に司法、立法、行政と書き、「立法は議会、行政は省庁、司法は裁判所のこと。それぞれの力をお互いにチェックし合う仕組みを三権分立と言い、行政のトップである大統領に対して、議会と裁判所は『それはおかしい』と判断すればストップをかけることができるんだ」と解説。就任直後に発令したイスラム圏の国民への入国禁止令に対し、連邦裁判所が「違憲」として一時差し止めたことを例に挙げた。
 日本も三権分立が憲法で定められている。日本の議会である国会で、行政権のある内閣の不信任決議案が可決された場合、内閣は衆議院を解散もしくは総辞職しなければならない。解散後の総選挙で支持を得られなければ、総理大臣は退陣することになる。
 「一人に大きな力を与えない、有権者がダメだと判断したら辞めさせられる。それが民主主義ではとても大切なことなんだ」
 米大統領の任期は1期4年で2期まで。「負けず嫌いのトランプ大統領は次の選挙も当選をねらっている」と池上さん。そのためには国内外に大混乱を招いても、イスラム圏からの入国禁止やメキシコ国境に壁を作るといった選挙中の公約を何が何でも果たそうとしている、と解説する。
 「公約を守ることは大事。でも、国や国民のためなのか、それとも単なる人気取りなのか」と池上さん。「国民のことを考えるのは政治家、次の選挙のことを考えるのは政治屋」という言葉を紹介し、こんなメッセージを送った。
 「みんなも7年後には選挙権を持つ。政治家か政治屋かを見極める力をつけることが大事。6年生で学ぶ日本の政治の仕組みをしっかりと勉強してほしい」
 (中津海麻子)

 <授業を終えて>
 塩田有佳子さん「暴言ばかりだと思っていたけれど、トランプ大統領には計算があると知りました」
 片桐稜也くん「政治家か政治屋かという話がおもしろかった。18歳までに見極める力をつけたいです」
     ◇
 池上さん「ニュースなどでアメリカのことを断片的ながらもよく知っていて驚きました。日本の政治も含め、点の知識をつないで線にし、面として理解していく。そのために学校の勉強があることも伝えたかった」

 ●東京都町田市、全校281人、大泉永校長。授業を受けたのは5年生の34人、担当は水谷紀彦先生(1月開催)。=朝日新聞2018年2月26日掲載