小さな「作者たち」が生み出す不思議 絵本作家・宮西達也さん@沖縄・読谷村立図書館

沖縄本島中部に位置する読谷村。地元の人たちから愛される村立図書館に、絵本作家の宮西達也さんがやってきた! 実は12年前から、図書館と利用者が力を合わせ、ベルマークをコツコツとためていたのだ。
「こんにちは! ベルマーク3万点の男、宮西達也です」
子どもたちと保護者たちからは、笑いと大きな拍手が起こった。
宮西さんはあいさつも早々に、自著の絵本を読み始めた。
ネコやイヌ、ゾウなどが名前を呼ばれると元気いっぱい返事をする『はーい!』。作家自らの楽しい読み聞かせに、子どもたちも思わず一緒に「はーい!」。ほかにも、幼少時代の宮西さんと弟のやりとりをモチーフに描いている『まねしんぼう』、さまざまな動物、そして人間のお母さんのおっぱいと赤ちゃんを描く『おっぱい』と、人気作品を次々と披露。10年以上待ちわびた宮西さんの読み聞かせに、会場は一気に熱を帯びた。
続いて、段ボールを使った立体作品作りのワークショップが始まった。台紙のステージの上にオリジナルキャラクターが並ぶ、推し活などでおなじみの「アクスタ」(アクリルスタンド)のいわば段ボール版だ。
まずは作品を並べる台紙作りから。
「模様も形も好きなように作ってみよう。時間は3分。よーい、スタート!」
宮西さんの掛け声で、子どもたちは段ボールにマーカーでハート柄やストライプを描いたり、ハサミでギザギザや角を丸く切ってみたり。それぞれの台紙ができたところで、上に飾るキャラクターを作っていく。
恐竜、ウサギに、足がたくさんあるタコのオバケ!? 子どもたちが生み出す不思議で魅力的なキャラに、「かわいいね!」「もう少し大きく描くとあとで切りやすいぞ」と宮西さん。どんどんペンを走らせる子もいれば、なかなか手が動かない子も。「好きなものはある? なんでもいいんだよ」。進み具合や表情を見ながら、宮西さんは一人ひとりに声をかけていく。
「メインのキャラクターは4つか5つ、そのほかに、周りを飾る小さなモチーフも描いてみよう」
作業は時間との勝負。しかし、宮西さんは子どもたちをせかしたりはしない。描いたキャラやモチーフはハサミで切り取るが、ハサミが大きく上手に使えない小さな子も。「お父さん、お母さん、手伝ってあげて」と促しながら、宮西さん自らもハサミを持ってお手伝いに参戦する。
描いたキャラや周りを飾るモチーフをすべてハサミで切り取ったら、いよいよクライマックス! 台紙にレイアウトし、立ててボンドで貼り付けていく。「正面から見て、キャラが重ならないように、少しズラして貼るのがコツだよ」と宮西さん。平面だった絵が立体の世界として立ち上がっていく様子に、子どもたちの瞳が輝き、手には一気に勢いがつく。
ここで、さらにうれしいサプライズが。宮西さんお手製のネームプレートが配られたのだ。前日の夜、宮西さん自ら子どもたち一人ひとりの名前をかわいくデザインして描いたもの。自分の名前が書かれたプレートを正面に立て、子どもたちのアート作品が次々と完成した。
「キャラが大きく描けていてかっこいい!」「土台の色が全体を引き締めてるね」。宮西さんが全員の作品を一つひとつ講評しながら、高々と掲げてお披露目すると、「作者たち」はちょっぴり恥ずかしそうにしながらも、みんな誇らしげ。仲間の作品を見て「すごーい」と子どもたちからは声が上がり、一緒に参加した保護者たちは大きな拍手を送っていた。
「遠近感が出たり、影が生まれたり。絵を描いているだけでは見えなかった世界ができたと思います」と宮西さん。数々の力作に、子どもたちにも宮西さんにもとびきりの笑顔がはじけた。
実はこの図書館は今年秋、新しい建物に移転する予定になっている。長年愛されてきた現在の図書館の、忘れられない思い出になったに違いない。
白熱ワークショップを終え、宮西さんはしみじみとこう振り返った。
「すぐに絵を描ける子もいれば、何を描いていいのか悩んでしまい時間がかかる子もいる。でも、最後は必ずちゃんと完成します。いつも僕の発想力を超えた作品に巡りあえることが、楽しいし、感動するのです」
新城瑛大さん(4年)「ロボットっぽいキャラを描いてみました。最後は想像した通りのかっこいい作品ができて、うれしかった」
肥田麻里さん(3年)「お気に入りの食べ物系のキーホルダーをヒントに絵を描きました。ハサミで細かい部分を切るのが少し難しかったです」