「はじめまして。ぼくは大阪から来ました。大阪ってこんな形をしてるんやよ」と、絵本作家の長谷川義史さんは筆を執った。チャララ~♪と、口ずさみながら模造紙に筆を走らせると、できたのは丸山裕司校長の似顔絵だ。「似てるー」と男児の声が響くやいなや、児童たちが集まった体育館はどっと笑いに包まれた。
『しってるねん』『いいからいいから』など、多くの自作を用意した長谷川さんはプロジェクターに絵本を映して読み聞かせたり、模造紙に絵を描く“書き語り”をしたり、ウクレレを奏でて歌ったり。細かな趣向を凝らしたのは「1年生にも6年生にも楽しんでほしい」という思いやりだ。
笑い声が一段と大きくなったのは、長谷川さんが初めて作った『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』を読んだとき。「ひいおじいちゃんの、そのまたひいひいおじいちゃんの……」と“おじいちゃん”を探っていくと、おさるさんにたどりつく。「ひいひいひいひいひい……」と、息継ぎなしで読む熱演に目が離せない。
「命が途切れずにつながって生まれてきたって、本当に奇跡的。自分の命も他の人の命もすごく大切やね」と長谷川さんが話すと、みんな首を縦にコクリ。
盛り上がったところで長谷川さんは自作の遊び歌『大阪うまいもんのうた』をもじって、「小倉編」を作ろうと呼びかけた。「ハイ!」と、一斉に手が上がる。「小倉牛」「ラーメン」など、名物を誇らしげに答える姿に、長谷川さんは「自分の町に好きなものがあるってすてきなこと」とうれしそう。できた歌詞を、みんなで振り付けして歌った。
最後の一冊に『へいわってすてきだね』を選んだ長谷川さん。伝えたいことがあると語り出した。じっと耳を傾ける児童たち。
「みんなと会えたのは、ぼくが絵を描いてきたから。人生は一回きり。好きなことを見つけて楽しんでほしい。そのためには平和でないと。戦争なんてしたらあかんのです」
(吉岡秀子)
<授業を終えて>
山下一樹(いつき)さん(3年)「おじいちゃんのおじいちゃんは……とたどっていく話が面白かった。命はつながっているんだと思った」
瀬口莉々葉(りりは)さん(6年)「作家という職業に厳しい人というイメージを持っていたが、長谷川さんは楽しい方で会えてうれしかった。これからも、たくさん本を読みたい」
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長谷川さん「最後まで熱心に聞いてくれて、素直ないい子たちだと感じた。小さいころから絵を描いているぼくと会って『好きなことをずっと続けている大人もいる。自分もがんばろう』と思ってくれたらうれしい」
●北九州市、全校126人、丸山裕司校長。授業を受けたのは1~6年の120人。担当は多川明宏教頭(昨年11月開催)。=朝日新聞2018年2月26日掲載