世界にひとつだけのヘンテコ・ワールド 絵本作家・宮西達也さん@山口県岩国市立修成小学校
同校の校庭の真ん中には、樹齢110年を超えるクスノキがそびえたつ。「どうしてこうなった⁈ これじゃ、野球やサッカーするとき、絶対、ボールが木に当たるよね!」
見たことのない光景にテンションがあがった宮西達也さん、「今日は何はさておき、自慢話をしにきました」と、1~6年の全校生徒16人と参観の保護者を笑わせた。
授業は自己紹介を兼ねたスライドから始まった。翻訳本が出版されている海外の国々を飛び回る姿や、作品のアニメ化の際に出会った有名人らとの写真が映し出されると、みんなの目は丸く。宮西さんはやっぱり遠い人なのか…と思いきや。自著の『はーい!』(アリス館)や『のびのびおおかみ』(ポプラ社)、『まねしんぼう』(岩崎書店)を、多彩な声色で読み聞かせて、みんなの心をわしづかみに。
さらに、子どもたちが熱望していた『にゃーご』(鈴木出版)を取り上げ、登場人物のネズミ役に3人の教職員を抜擢。ネコ役の宮西さんとの臨場感たっぷりの掛け合いは、さながら即興劇のよう。
この作品は2年生の教科書にも載っているが、「これまで保育園や学校で聞いてきたのと全然違う。こんな読み聞かせは初めて!」と、みんな大喜びだ。
宮西さんは、「今でこそおじさんは絵本のプロ、それもけっこう上のほう」とまた笑わせてから、「でも長いこと、ずーっと下の方だった」。
学校の先生は「絵描きになるなんて無理、あきらめなさい」。同期の仲間は脱落していき、出版社からはそっぽを向かれ、アルバイトで食いつないだ時代があった。
そんな報われない日々を送っていたある日、「ヘンテコな絵だけれど、賭けてみよう」と、手を差し伸べてくれる編集者が現れた。「あきらめないで一生懸命続けていると、助けてくれる人がきっと出てくる」
生徒のひとりに、「あなたにだって助けてくれる人がいるでしょう?」と尋ねると、「いない」という返事が。「じゃあ、服は誰が買ってくれるの?」「家族」「学校に来ると誰がいる?」「友だちや先生」「そうでしょう!」
自分たちはすでに助けてくれる人に出会っていた。そうしたことに気づかされた子どもたちに宮西さんは、「出会った人たちを大切にしよう。そのことが将来に必ず生きてくる」
授業後半のワークショップは段ボールで作る立体作品、言ってみれば『世界でひとつのヘンテコ・ワールド』制作だった。ルールは簡単、黒とオレンジ、この2色の油性ペンを使うこと。
まず台紙を切って色づけする。次に、別の段ボール紙に「ヘンテコなものを描いて!」。
さっそく描き始める子、考え過ぎて固まる子。宮西さんは、そんな子どもたちの間を飛び回り、「どんな絵でも恥ずかしくないよ。下手でも失敗でもいいんだ。だって、ヘンテコなものを描くんだから!」
なるほど、「ヘンテコなもの」には、絵が苦手だとか下手だといった、コンプレックスを払拭させる意味があった。すると、毛が生えたクモ(?)、ロケットみたいなイカ(?)、バンザイしているクスノキ(?)など、さまざまな〝ヘンテコ〟が。
ある程度描けたらハサミで切り抜く。「絵の線のギリギリまで切ろう」
これが難しい。おおざっぱに切って終わりにしていると、「もっと際(きわ)まで切る。あきらめないで!」
手本を見せる宮西さんの目は真剣で、小学生相手だからと妥協しない。子どもたちもそれぞれひとりのアーティストなのだ。
全部切り抜いたら、台紙に貼り付けて仕上げる。できた子から宮西さんに見せに行くと、「みんな見て! 素晴らしいレイアウトだよ」「きちょうめんな絵がヘンテコさに拍車をかけている!」「いっぱい作ったな。上手」と講評。宮西さんの解説で作品がさらに輝いて見えた。
大成功に終わった授業を振り返り、「テクニックがなくたっていい作品はできる。それがアートのいいところ。わかってもらえたらいいな」と宮西達也さん。「それにしても子どもって、大人の予想をはるかに超えてくるよね!」
絵本作家と子どもたちの奮闘ぶりを、校庭のクスノキが見守っていた。
竹田璃安(りあん)さん(2年)「絵の線ギリギリに切るのがとてもむずかしかった。それができる宮西さんはすごかったし、最後にギュッてしてくれたのもうれしかった」
平田琉樹(りゅうじゅ)さん(4年)「本を読むとき、宮西さんが大声を出したからびっくり。ぼくもあんなふうに読み聞かせできる人になりたいし、やってみたい」
末田翔馬さん(6年)「何を描こうか悩んでいたら、宮西さんが、まず○△□を描いてごらん、と。やってみたらどんどん面白くなった。絵を描く人ってもの静かで無口な人だと思っていたから、絵本作家のイメージが変わりました」