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「自治体がひらく日本の移民政策」書評 「多文化パワー」を利用すべき

評者: 加藤出 / 朝⽇新聞掲載:2016年10月02日
自治体がひらく日本の移民政策 人口減少時代の多文化共生への挑戦 著者:毛受 敏浩 出版社:明石書店 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784750343655
発売⽇: 2016/07/15
サイズ: 19cm/231p

自治体がひらく日本の移民政策―人口減少時代の多文化共生への挑戦 [編著]毛受敏浩

 「今はジェットコースターでいえば、先頭車両が下を向きかけたぐらいに過ぎない」。だが「全車両が下向きのスロープにかかれば一挙に日本の人口減少は加速する」と著者は今後の状況を的確に表現している。
 人口減少は心配だが、世界的な移民・難民問題のニュースを目にすると、「外国人労働者を日本で増やしても大丈夫か?」と不安を抱く人は多いと思われる。
 その問題を考える上で、本書は貴重な材料を提供してくれる。第三章には外国人の受け入れ現場で多文化共生に取り組んできた地域の専門家8人の経験談が載っている。また、海外の移民受け入れの失敗例に学べば、日本は「改良を加えた政策を打ち出すことができるはず」と著者は解説する。
 人口減に直面している地域の方が国政より意識が進んでいることが本書から伝わってくる。「閉塞(へいそく)感が強まりつつある日本」を再活性化させるためにも「多文化パワー」を利用すべきだとの提言に耳を傾けたい。