「一流の人は本気で怒る」書評 自己を磨き、正しく、思いっきり
評者: 本郷和人
/ 朝⽇新聞掲載:2015年06月21日
一流の人は本気で怒る (文春新書)
著者:小宮 一慶
出版社:文藝春秋
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784166610167
発売⽇: 2015/04/20
サイズ: 18cm/220p
一流の人は本気で怒る [著]小宮一慶
喜怒哀楽とくくるけれど、「怒り」はちょっと別物に思える。その場だけでは完結せず、必ずあとから後悔の念が襲ってくるからだ。あんなに怒鳴(どな)らなければ良かった、とか。自分の器の小ささが怨(うら)めしい、とか。つきあいが台無しになり、二度と仕事が来なくなることも(悲しい体験談)。
そこでお勧めしたいのが、闇雲に当たり散らすのではなく、「正しく」「本気で」怒れ、と説くこの一冊。松下幸之助やジョブズら達人の事例を引きながら、望ましい仕事のしかたと人間関係の作り方、あらまほしき怒り方を懇切丁寧に教えてくれる。
正しく怒るには真っ当な考え方が必要であって、それには古典を読んで自己を磨くのがもっとも有効である、か。うーん、なるほど。著者の力強いことばはシンプルでありながら、心地よく腹に落ちる。読後感は実に爽やか。
ちなみに一流の人だから正しく本気で怒るのであって、本気で怒っている人が一流とは限らない。ご用心、ご用心。
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文春新書・778円