「格闘者—前田日明の時代」書評 名レスラーの一代記
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2015年07月19日
格闘者 前田日明の時代 1 戦後史記列伝戦士第一青雲立志篇
著者:塩澤 幸登
出版社:茉莉花社
ジャンル:スポーツ
ISBN: 9784309920580
発売⽇: 2015/06/10
サイズ: 20cm/550p
格闘者—前田日明の時代(1) [著]塩澤幸登
危険な匂いのするプロレスラー、格闘家の一代記は全3巻。「青雲立志篇」と名付けられた本書では20代半ばまでが描かれる。大阪の在日家庭に生まれた前田。両親の離婚に遭い、同居した父から見捨てられ、半ばだまされるようにプロレス入りする。純粋さを求める青年は「筋書きのある格闘」に戸惑い、嫌悪するが、戻る場所がない。
プロレスラーとしては、先の読めない行動をする人を指す「トンパチ」の異名もとった前田だが、太宰治や三島由紀夫、小林秀雄らの文学作品に浸る。佐山聡、藤波辰爾、藤原喜明らのプロレス観や、師とあおいだカール・ゴッチとの交流も興味深い。今年初冬に発刊予定の(2)は、UWF時代を中心に。
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河出書房新社・3240円