「“ひとり出版社”という働きかた」書評 編集者の思いを本に凝縮
評者: 本郷和人
/ 朝⽇新聞掲載:2015年10月11日
“ひとり出版社”という働きかた
著者:西山 雅子
出版社:河出書房新社
ジャンル:社会・時事・政治・行政
ISBN: 9784309247182
発売⽇: 2015/07/27
サイズ: 19cm/260p
“ひとり出版社”という働きかた [編]西山雅子
全力投球で10冊、本を書いてきたけど売れないなあ。そうぼやいたら、向かいの席の編集者が呻(うめ)いた。ぼくなんか、キミ並みには誠実な著者10人とつきあっているけどヒットが出ないよ……。
それくらい本は売れない。本ってもはや時代遅れの代物?と疑いたくなるこのご時世に「ひとりで」本作りをしている人たち10人の姿を、本書は丁寧に紹介していく。
こんな本があったら面白いと企画し、ふさわしい書き手を捜し、執筆を依頼する。装幀(そうてい)をデザインし、販売部数や価格を定め、書店への働きかけやイベントの企画など売り方を考える。もとより潤沢な資金はないので、どの段階でも工夫が必要になる。
10人の編集者はみな個性的。経歴と今後への抱負はそれぞれ。本へのスタンスもいろいろ。その差異を尊重する著者の姿勢が心地よい。けれども、そのいろいろな思いは最終的に「良い本」にギュッと凝縮していく。本好きにぜひお薦め、の一冊である。
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河出書房新社・1836円