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葉室麟「鬼神の如く―黒田叛臣伝」書評 「お家騒動」の謎を骨太に追う

評者: 本郷和人 / 朝⽇新聞掲載:2015年11月01日
鬼神の如く 黒田叛臣伝 著者:葉室 麟 出版社:新潮社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784103280132
発売⽇: 2015/08/21
サイズ: 20cm/311p

鬼神の如く―黒田叛臣伝 [著]葉室麟

 江戸時代はじめ、筑前(福岡県)福岡藩の第二代藩主・黒田忠之(有名な軍師・官兵衛の孫)は、倉八十太夫(くらはちじゅうだゆう)を抜擢(ばってき)して専制を行った。そのうちには、大型船の建造、足軽の大量雇用など、幕府の警戒を招く事業が含まれていた。
 1632(寛永9)年、首席家老の栗山大膳は「忠之に反逆の意志あり」と幕府に訴えた。忠之と大膳が江戸の法廷で争った結果、幕府は逆意なし、と裁決を下す。大膳と十太夫がともに失脚する一方で、黒田藩は存続を許された。
 これが「三大お家騒動」の一つ「黒田騒動」であるが、その全体像はいまだ明らかではない。時に忠臣、時に大悪人とされる大膳はなぜ、何を目的として主家の謀反を訴え出たのか。本書はそのナゾを追う骨太なフィクションである。福岡藩や幕閣の人物が丁寧に描かれ、秀吉の朝鮮出兵やキリシタンの動向が事件に深く関与する。宮本武蔵や凜々(りり)しいヒロインも登場し、武士の生きざまが存分に語られる。読み応え十分な一冊。
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 新潮社・1728円