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「幻の東京五輪・万博1940」書評 国威顕示欲が狙った巨大祭典

評者: 武田徹 / 朝⽇新聞掲載:2016年03月06日
幻の東京五輪・万博1940 著者:夫馬 信一 出版社:原書房 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784562052738
発売⽇: 2016/01/08
サイズ: 22cm/292p 図版16p

幻の東京五輪・万博1940 [著]夫馬信一

 1940年の東京にも五輪の開催計画があった。本書は丁寧な資料考証を通じて、謎の多いその実態に迫る。
 五輪誘致の決定は36年。夏冬同国開催の慣例により冬季五輪も札幌に決まったし、万博も40年開催とされた。
 豊富な収録図版はそれらが情熱的にかつ具体的に準備されていた事情を雄弁に物語る。にもかかわらず全面中止に至った理由を「日米開戦が近づいたため」と説明するだけでは不十分だろう。皇紀二六〇〇年記念に三つの大イベント開催を企てた背景には満州事変後、求心力を強めていた総力戦体制と肥大する国威顕示欲があった。その意味で戦争の影の中に浮かび上がり、幻と消えた祭典だった。
 40年五輪の施設は64年五輪に生かされた。2020年五輪も東京万博会場予定地が競技場となる。本書が示す多くの戦前戦後の連続性を乗り越え、次の五輪をいかに新しい時代にふさわしい大会にするか。未来への課題も意識させてくれる一冊だ。
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 原書房・3780円