鈴木大介「最貧困女子」書評 貧困層からもこぼれ落ちる
評者: 水無田気流
/ 朝⽇新聞掲載:2014年12月21日
最貧困女子 (幻冬舎新書)
著者:鈴木 大介
出版社:幻冬舎
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784344983618
発売⽇:
サイズ: 18cm/213p
最貧困女子 [著]鈴木大介
今年は報道番組や評論などで女性の貧困問題が注目を浴びた。「プア充」と呼ばれる、低収入でも楽しく暮らす若者も耳目を引いている。だが本書は、これら貧困論からも零(こぼ)れ落ちる最下層の女性たちの生活実態に迫る力作である。
風俗業の面接も容姿で落とされ、フリーの売春で二児を養うシングルマザー。知的障害を抱えながら路上売春で食べている女性、実母に売春を勧められた経験をもち17歳で子どもを産んだ風俗嬢……。皮肉にも、身体を売ることができるという事実が、彼女たちの貧困を不可視化している。彼女たちは、低所得に加え「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」、さらに「精神障害・発達障害・知的障害」により、貧困層からも排斥される。自己責任論が前提とする「自己」がすでに壊されている、との言葉はあまりにも重い。それゆえ、就業でも恋愛でもつまずきやすい。実態にあわせ、福祉制度の網の目を、細かく柔軟に再編すべきだ。一刻も早く。
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幻冬舎新書・842円