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権威も良識も笑いのめした男

狂講深井志道軒 トトントン、とんだ江戸の講釈師 著者:斎田 作楽 出版社:平凡社 ジャンル:芸術・アート

価格:3024円
ISBN: 9784582654097
発売⽇: 2014/10/24
サイズ: 20cm/323p

鬼才・平賀源内が師と仰いだ、稀代の講釈師・深井志道軒。江戸中期、軍談のあいまに繰りひろげる過激な当世批判とエロ談義で一世を風靡。その絶妙な話芸と虚実なかばする伝説的な生涯…

評者:いとうせいこう / 朝⽇新聞掲載:2014年12月14日

狂講—深井志道軒—トトントン、とんだ江戸の講釈師 [著]斎田作楽

 深井志道軒の名前は、浅草で付き合いの長い人たちからよく聞いている。18世紀中盤、浅草寺の境内によしず張りをし、軍談を講釈した。
 フツーの講釈師ではなかった。書名にも「狂講」とある通り、話は筋道から外れ、その過激な社会批判と猥談(わいだん)ゆえに僧侶と女性は顔をそむけた。
 だがその「フリートーク」が「歌舞伎役者二世市川団十郎(海老蔵)と天下の人気を二分した」と本書にもある。よくわからない男根状の棒を持って「トトントントン」と机をたたいてみせた男が江戸のスターなのだ。
 著者はこの人物のあらゆる記録を一冊にまとめあげた。
 だが、真実は薄闇に包まれている。種々の伝説をまとって姿をくらまし続ける志道軒は、歴史の中でも“狂講”をしているように見える。その煙幕は奇跡的な術だ。
 こうやって権威と戦い、良識を笑え。そのメッセージが伝わってくることだけが確かである。トトントントンという音が耳元に聞こえてくる。
    ◇
 平凡社・3024円