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木下昌輝「宇喜多の捨て嫁」書評 妖刀のような切れ味のラスト

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年11月23日
宇喜多の捨て嫁 著者:木下 昌輝 出版社:文藝春秋 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784163901503
発売⽇: 2014/10/27
サイズ: 20cm/349p

宇喜多の捨て嫁 [著]木下昌輝

 備前の宇喜多直家といえば、斎藤道三や松永弾正らと並ぶ悪辣(あくらつ)な戦国大名として知られる。6編の連作小説の冒頭を飾る表題作は、直家の末娘の嫁入りを描く。母や姉たちは政略の犠牲となり自害や狂気に追い込まれている。剣術上手のこの末娘はどう未来を切り開くのか。血膿(ちうみ)を噴き出す奇病に侵された直家を始め登場人物それぞれが秘めた苦悩や覚悟が次第に明かされ、巡る因果は大きな輪となり、妖刀(ようとう)のような切れ味のラストが各編に待ち受ける。ずっしりとした読み応えだ。
 著者はかつて藤沢周平や山本一力らが輩出したオール読物新人賞の受賞者で、これが単行本デビュー作。次作も待ち遠しい。
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文芸春秋・1836円