ジョン・ウィリアムズ「ストーナー」書評 詩情がにじむ文章の運び
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2014年11月16日
ストーナー
著者:ジョン・ウィリアムズ
出版社:作品社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784861825002
発売⽇: 2014/09/01
サイズ: 20cm/333p
ストーナー [著]ジョン・ウィリアムズ
読んでいるあいだじゅう、心のどこかが震えているような気がした。そして、読み終わったあともそれが続いている。
原作は1965年に米国で発売されたが、長く忘れさられていた。今世紀に入って復刊され、欧州各国でベストセラーになった。何を書いた小説かといえば、二つの大戦を経て退官間際に亡くなった無名の助教授の一生、というしかない。静謐(せいひつ)にして詩情がにじむ文章の運びがすばらしい。零細な農家に生まれた青年が文学に目覚め、結婚と家庭生活に失望し、仕事に打ち込むも大して報われないまま死んでいく。だが、これでよし。悲しみと諦めに満ちていても、人生は愛すべきもの。本書はそう確信させてくれる。 ◇
東江一紀訳、作品社・2808円