「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?」書評 遺伝も環境も、どちらも重要
評者: 佐倉統
/ 朝⽇新聞掲載:2014年11月16日
スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? アスリートの科学
著者:デイヴィッド・エプスタイン
出版社:早川書房
ジャンル:スポーツ
ISBN: 9784152094773
発売⽇: 2014/09/25
サイズ: 19cm/445p
スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?—アスリートの科学 [著]デイヴィッド・エプスタイン
スポーツの秋。手に汗握る熱戦の数々。だが、その勝敗や成績が遺伝子であらかじめ決まっているとしたら、ちょっと興ざめかもしれない。
運動能力を決めるのは遺伝か環境か? この古くて新しい問題に、著者は正攻法で迫る。まずは学術論文をくまなく精査して、研究成果を総覧する。次に、興味深い研究者に直接取材をおこなう。さらに、独特の遺伝的素因を持っている世界中のアスリートたちにも、インタビュー調査を敢行する。かくして、厳密な科学研究の分厚い成果と、ジャーナリスティックな物語性を、見事に融合させた。
遺伝的要因も環境要因も、どちらも大きな役割を果たしているという結論は、穏当で真っ当なものである。
著者がこの領域で仕事をすることになったきっかけのひとつは、遺伝的疾患によって若くして亡くなった、高校時代の友人への追悼の念だという。いい話だ。
翻訳も読みやすい。読書の秋にお薦めの一冊。
◇
川又政治訳、早川書房・2268円