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「シャバはつらいよ」書評 難病・震災、ユーモア交え描く

評者: いとうせいこう / 朝⽇新聞掲載:2014年08月17日
シャバはつらいよ 著者:大野 更紗 出版社:ポプラ社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784591140826
発売⽇: 2014/07/14
サイズ: 19cm/217p

シャバはつらいよ [著]大野更紗

 第1作『困ってるひと』では若くして突然始まってしまった自らの難病(自己免疫疾患系の希少な病)と、過酷な入院生活を驚くべきユーモアで描き、現在の医療制度、医師と患者の戦いを軽いタッチで伝えて多くの読者を得た。
 今回の新作で、著者はついに病院を出て、近所に一人暮らしをする。故郷・福島では彼女の難病に対応出来ず里帰りは不可能。かといってずっと入院はしていられない。
 そこに立ちふさがる諸問題の数々を、私たちはほとんど想像出来ないのではないか。布団や低い床には起き上がれない可能性があるから寝られない。感染症が危険だから食器は洗えないし、掃除にも手をつけられない。年末年始に調剤薬局が閉まることが命取りになりかねないなどなど。
 さらに著者は東日本大震災に遭い、実家は原発事故の近隣で被害を受ける。
 だが、そこで「難」は同じだと立ち上がる著者。さて苦難の中で大学院にまで入り直す彼女のこれからは、次作。
    ◇
 ポプラ社・1404円