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人間苦追う「経世済民」の人

これを語りて日本人を戦慄せしめよ 柳田国男が言いたかったこと (新潮選書) 著者:山折 哲雄 出版社:新潮社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

価格:1404円
ISBN: 9784106037436
発売⽇: 2014/03/28
サイズ: 20cm/237p

「遠野物語」の序文に記された激烈な言葉の意味とは? 文明から遠く離れた過酷な人生に目を向けていた柳田国男の半生を俯瞰し、民俗学という学問を通して訴えたかったメッセージを探…

評者:赤坂真理 / 朝⽇新聞掲載:2014年03月16日

これを語りて日本人を戦慄せしめよ——柳田国男が言いたかったこと [著]山折哲雄

 経済効率が至上となったこの国で、忘れられたのは、「経済」というまさにその語が、「経世済民(世を経〈おさ〉め民を済〈すく〉う)」の略だったことではないだろうか? 法制局参事官として「経世済民」を考え挫折した柳田国男は、未(いま)だ近代化の及ばざる山と山里に出かけ、まったく新しい学問を日本に拓(ひら)いた——民俗学。

 本書の衝撃的なタイトルは、『遠野物語』の冒頭にある「これを語りて平地人を戦慄せしめよ」から来ている。一体、山に何を見たのか? 人里から追われ、飢餓線上をさまよう山人たち。彼らの生きる様を「偉大なる人間苦」と柳田は呼んだ。著者は「人類の生存に課せられた業のような重荷」ではないかと言う。そこにあるのは仏陀(ぶっだ)のような視点でありはしないか。
 「経世済民」を離れて「経済(エコノミー)」となった活動は、獰猛(どうもう)で、私たちを呑(の)み込み、その内にいるも苦、外れるは、さらに苦。今こそ柳田国男を読み、戦慄しつつ、未来を紡ぎなおす時ではないか。そう思う。
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 新潮選書・1404円