「中村勘三郎 最期の131日」書評 みとった妻が描く細部
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2014年01月12日
中村勘三郎最期の131日 哲明さんと生きて
著者:波野 好江
出版社:集英社
ジャンル:芸術・アート
ISBN: 9784087715422
発売⽇:
サイズ: 20cm/276p
中村勘三郎 最期の131日―哲明さんと生きて [著]波野好江
歌舞伎役者としてはまさにこれから、という57歳で十八世勘三郎が亡くなったのは一昨年の暮れ近く。なぜ、急に、と誰もが驚いた。最期をみとった妻が、夫の闘病の日々を細部まで、思いを込めて描き出す。
その2年前から、「うつ病」と診断されたり、激しい耳鳴りに悩まされたり。それを乗り越えた後に「食道がん」の診断。手術後、肺に致命的な症状が起き、転院また転院。苦しい中で芝居のせりふや踊りのしぐさを見せ、医師も驚く生命力で最後まで生きる望みを失わなかった。夫が患者であってもサービス精神を忘れないプロの役者なら、妻も「職業は十八代目中村勘三郎の妻」。プロとプロが手を携えて病魔と闘った記録である。
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集英社・1470円