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「劣化国家」書評 西洋の「大いなる衰退」の原因

評者: 原真人 / 朝⽇新聞掲載:2013年12月08日
劣化国家 著者:ニーアル・ファーガソン 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784492314395
発売⽇:
サイズ: 20cm/186,15p

劣化国家 [著]ニーアル・ファーガソン

 昨今、政治も企業経営も短期的な利益や思惑だけで動くことが増え、それが思わぬ機能不全を引き起こしている。経済危機の頻発といった症状がまさにそうだ。しかも困ったことに、根本原因も処方箋(せん)も見つからないありさまだ。
 歴史学者である著者は数百年単位の視点をとることで、問題の本質が西洋世界の「大いなる衰退」にあるととらえる。そして西洋文明の発展を支える四つの基幹装置が壊れつつあると指摘する。
 たとえば「民主主義」は政府債務の膨張を通じ将来世代への負担の先送りを許している。「資本主義」の下の複雑な金融規制は弱肉強食の経済をうまく制御できていない。「法の支配」は法律家の支配に成り下がり、自由な「市民社会」には衰えが目立つ。
 世界的な発信力をもつ著者の英BBC放送での講義が元になった本だ。そのためか解説ぶりはいたって大胆かつ簡潔。緻密(ちみつ)さが少々欠けても、歴史的な潮流変化をざっくりつかむにはむしろありがたい。
    ◇
 櫻井祐子訳、東洋経済新報社・1680円