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『日本国憲法の初心 山本有三の「竹」を読む』書評 今こそ思い起こせと誘う

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2013年10月06日
日本国憲法の初心 山本有三の「竹」を読む 著者:鈴木 琢磨 出版社:七つ森書館 ジャンル:法学・法律

ISBN: 9784822813802
発売⽇:
サイズ: 17cm/198p

日本国憲法の初心 山本有三の「竹」を読む [編著]鈴木琢磨

 本書一読後の結論は、今こそ私たちは、「山本有三」を思い起こせとの誘いである。劇作家、作家として幾つかの名作(『路傍の石』など)を残す一方で、戦後は政治家として参議院に緑風会を結成するなど、その実像は「リベラルで、自由主義者、ヒューマニスト」(編著者)であった。
 本書は、戦後すぐに山本のラジオ放送、新聞への寄稿、議会での質問などを集めて刊行された書『竹』(当時は細川書店)を、現役の新聞記者が改めて編著という形で世に出した。山本は口語体論者、現行憲法の条文化にあたり当時の草案づくりの事務方に協力した。前文、第一条、第九条などそれがどの程度生かされたかが示される。「戦争放棄と日本」の中で山本は、日本は、「真理と自由と平和」を目ざす「新しい国家」を築きあげよといい、若者は、「かしらをあげ、胸を張って、信ずる道をドシンドシンと踏みしめて」進めと励ます。「山本有三」の不屈の精神をこの社会は必要としている。
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 七つ森書館・1680円