伊坂幸太郎「仙台ぐらし」書評 人気作家の創作の原点
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2012年03月11日

仙台ぐらし (叢書東北の声)
著者:伊坂 幸太郎
出版社:荒蝦夷
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784904863183
発売⽇:
サイズ: 19cm/216p
仙台ぐらし [著]伊坂幸太郎
伊坂幸太郎は仙台を描き続けている。例えば小説『ゴールデンスランバー』は、首相暗殺犯に仕立てられた男が街を逃げ回る。
自らが暮らす仙台に関するエッセー15本を載せた本書は、作家が日々どう想像力を働かせているのか、創作の原点を感じさせる。「見知らぬ知人が多すぎる2」は、喫茶店で見知らぬ男性と出会う話だ。その男性を、身近なある人と重ねて楽しんでしまう。
一方で震災後に書いた「いずれまた」では、覆いに隠された仙台駅を包帯と重ねる。回復を祈るような想像力が胸を突く。
想像力に触れ、震災ボランティアの2人を描く巻末の短編「ブックモビール」を読むと、震災に限らず、厳しい現実に向き合える気がしてくる。
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荒蝦夷・1365円