『エンジェル投資家 リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか』 [著]ジェイソン・カラカニス
エンジェル投資家とは、主に米シリコンバレーで創業期の非公開企業(スタートアップ)に投資する人たち。彼らは「ラスベガスでギャンブルするより手強(てごわ)いリスク」を相手にするが、その見返りに「人生が一変するほどの大金」を得ることもある。著者はその一人で、配車サービスの米ウーバーへの初期投資家として知られる。
本書は、スタートアップの資金調達ラウンドから投資案件の評価、創業者との付き合い方、月次報告書のチェック、さらにエグジット(利益回収)まで、エンジェル投資の全貌(ぜんぼう)を詳説。著者の体験に基づき、失敗例も紹介している。
中でもツイッターへの投資チャンスをふいにした失敗談は痛切だ。同社の共同創業者ビズ・ストーン氏らとブランチを共にしながら、彼らが今、何を食べているかをツイートするデモを見た著者は「誰もビズが何を食ってるかなんて興味ないよ」と投資を断ってしまう。これは5千万ドルの判断ミスだった。
以来、どのプロダクトが成功するかは予測できないと考え、「どの人間が成功しそうか?」の判断に全精力を傾けるようになったという。シリコンバレーの舞台裏を伝えるルポとしても興味深い内容だ。=朝日新聞2018年8月11日掲載