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ペルー先住民の謎に包まれた姿追う ノンフィクション「ノモレ」

『ノモレ』の著者、国分拓さん=伊ケ崎忍撮影

 ペルーの奥地に実在する、文明社会と接触したことのない民「イゾラド」。その謎に包まれた姿を追いかけたノンフィクション作品『ノモレ』(新潮社)を、NHKディレクター国分拓(ひろむ)さん(53)が刊行した。
 一昨年放映された「NHKスペシャル」での取材をもとに書かれた。2014年から3回、約85日間、アマゾンに滞在。食料調達のため、自ら魚を釣った。目的地に向かう途中、川の中州で野営し、雷雨に襲われて怖い思いをしたこともあったという。
 本作では、教育を受けた別の先住民のリーダー、ロメウの視点が軸になる。100年ほど前、ゴム農園で働かされる奴隷が森へ逃げたことがあったという。逃げ切って故郷に戻った人の中に、ロメウの曽祖父がいた。森に逃げたまま消息の分からない人々を、曽祖父たちは「ノモレ」と呼び、探してくれ、と言い残して世を去った。ノモレとは先住民の言葉で「兄弟」「仲間」といった意味だ。
 ある日、人里に出現するようになったイゾラドが、村を襲撃する事態が起きる。それでもロメウは彼らを「ノモレ」と信じ、イゾラドの家族と交流を重ねていく。その一途さに国分さんは尊さを感じた。「100年の伝承を継ぎ、『ノモレ』を探そうとする若いリーダーがいる。そのすべてを書きたいと思った」
 あとがきに「先住民には私たちと違った時間が流れている」と書いた。明日のことは語らず、100年後や千年後の未来について雄弁に語る。そんな未来を信じようとする人を書きたいのだ、と。
 やはり番組取材をもとに、アマゾンの深い森で原初の暮らしを営む人々の精神生活を描いた『ヤノマミ』(新潮文庫)で11年、大宅壮一ノンフィクション賞。「テレビの強さは、刻々変わる情報を伝えられること。でも、僕の志向性はそうした時事性を一見からめないところにある。普遍的で『腐らない』作品をつくりたい。それが僕の野心です」(木元健二)=朝日新聞2018年8月15日掲載